クイズに答えて「どうぶつの赤ちゃん」カードをゲットしよう!:カードにする動物を決めよう。〈10時間目〉

教師の手だてと子どもたちの姿

本単元の学習の目的として「赤ちゃん(紹介)カード」を書いてみんなで交換することを提案した。「ムシキングカード」や「プリキュアカード」収集に夢中になっている子どもたちから、「やりたい!」と大賛成の意見をもらった。「せんせい、ムシキングカードみたいにしたいから、あしたもってきていい?」という意見まで出て、意見を出したAさんは、次の日ピカピカのお気に入りのカードをもってきた。しかし、とても小さなカードなので、「こんな小さな字はかけない」も意見が出た。教師もまた絵や字をかくので、A4版のカードを想定していたのであるが、子どもたちのイメージとしては「小さい」ということがあるらしく、なんとかB5版の大きさのカードということで決着した。カードの中には、絵や特徴が書かれていることも、ここでおさえることができた。この話し合いの中で、子どもたちはカードづくりやステキなカードをゲットしたいという意欲を十分にかきたてられたようであった。
そして、動物の特徴がよく伝わるカードを書くために、「どうぶつの赤ちゃん」の説明文を正しく読み取ろうということで、教材文の学習を開始した。これまで説明文としては、「いろいろなくちばし」や「じどう車くらべ」を学習してきているが、説明文としては最後の学習となる教材文だけあって、長文のため読むことに抵抗感のある子どもたちも、見られた。音読カードとデジタル教科書が、このような子どもたちの学習の助けとなった。
この時期の子どもたちは、様々な動物に親しみをもっているものの、動物についての知識は断片的であり、赤ちゃんの頃や大きくなっていく様子などについての知識は、個人によって大きな差が見らる。動物の世界は千差万別で、子どもたちにとって不思議な発見に満ちた世界である。本単元では、その中の「ライオン」と「しまうま」の2例を取り上げただけであるが、対比的にとらえられており、その学習の中で意外に思う事実や新しい知識や発見は、子どもたちの「ライオンの赤ちゃんって、よわよわしいんだ!はじめてしったよ。」「しまうまの赤ちゃんは、ライオンの赤ちゃんよりすごいんだ。」という知らないことを知るということへの大きな喜びとなった。教材文を正しく読み取った後に、各自がこれまでの学習をもとに選んだ動物について調べてまとめるへとつなげたのであるが、この「もっと他の動物のことも知りたい!」という思いが、カードの内容を追求する原動力となるので、教材文を学習する際に、大いにかきたてておきたい。
自分のお気に入りの動物の赤ちゃんを見つけるために、教室の中に、区立図書館から貸し出しをうけた図書資料や教師がこのために選んだ図書資料を置いておき、読みたい時に読める環境を作っておいた。(写真1)それを借りる時には、カードに名前を書いてブックラックに入れておくことを約束しておいたため、どの子がどの本を読んだか教師がつかむことができた。朝読書の時間(写真2)はもちろんのこと、子どもたちは競って家にも借りてかえった。また、電子情報ボードで、いろいろな動物の赤ちゃんについてのデジタルコンテンツも見ることができるようにしておいたため、休み時間に集まって、自由に見ていた。(写真3)
図書資料 朝読書の時間
デジタルコンテンツ

「メディア創造力育成」は、ここで!

このような環境の中で、「自分が気にいった動物の赤ちゃんのことをカードにかきたい!」という思いを強くもつようになっていった。これは、収集することの楽しさを活動目的にしたことによる。特に、本物のカードをもってそのカードを拡大してみんなで「いいねえ」「ここには、何がかいてあるんだろう」とまじまじと見たことが、子どもたちのみんなに集めてもらえるカードを作りたいとかステキなカードをゲットしたいとかいう思いを強くすることになったようだった。また、本物のカードを見ながら、そこには何がかかれているのかを話し合ったことは、単にカードを作るのではなく、内容をしっかりとかかなくてはいけないという認識やステキなカードをゲットしたい、それはたくさんゲットされるためには、ステキなカードをつくらなくてはだめだという思いを子どもたちに抱かせたようである。この時期の子どもたちは「ムシキングカード」や「プリキュアカード」収集に夢中になっているところに、着目して設定した課題設定は、バッチリであった。「メディア創造力」育成の授業デザインをする際の教師の着目点にある「1」リアルで必然性のある課題を設定する2)好奇心や探求心、発想力、企画力を刺激する」に迫る視点であるといえよう。
さらに、教材文を学習することで、自分にはまだ「知らない情報」がたくさんあることに気付いた子どもたちは、競って図書資料を読んだり、デジタルコンテンツを見たりして、情報を集めていた。動物園に連れて行ってもらったり、自分の回りにいる生き物を観察し始めたりする子どもも出てきた。結果として、それぞれが違った動物の赤ちゃんをカードに書くことになったし、内容も豊富になったのである。今回の実践で、低学年において「メディア創造力」育成するには、教材文を学習する際、基礎基本をしっかりと押さえることが、カードの質を高くすることがよく分かった。当たり前のことを、子どもたちに教えてもらった。
← 前のページ × 閉じる 次のページ →