デジタル表現研究会
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画像表現ワンポイントアドバイス
インターネットの普及によって「デザイン」の領域はこれまでより格段と広がってきています。このコーナーではそんなデザインのこれからを語りながら、画像表現の向上に欠かせない、画像の作成・加工、修正などの必須テクニックを直伝指導いたします。
猪股裕一
多摩美術大学造形表現学部デザイン学科教授
第一回 これからのデザインって?
「モノ」消費のためのデザインから「情報」編集と構造のデザインへ
このコラムを始めるにあたって少し頭の痛い問題をまず共有したいと思います。それはデザインの以前と今です。デザインという言葉は産業革命以降に盛んになった言葉のようです。「デザインとは?」の問いかけに対して「問題解決の手法である」という答えがあります。わかりやすく言えば、熱いものが入ったコップに取っ手を付ければ手が熱くならなくてすむといったように、デザインそのものが問題を解決してくれるという考え方。もちろんそのフォルムや使い心地などが評価に大きな影響を与えます。一方「メッセージを可視化する手法である」という答えもあります。これもおわかりのように、ポスターなど、メッセージをわかりやすく、よりビジュアルにものを伝える手段です。前者の答えはモノづくりでプロダクト的な回答であり、後者の答えは印刷などのグラフィック的な回答でしょう。どちらも大量生産、大量消費を前提としたムーブメントが大きな原動力であり、モノを消費するという前提があってデザインという分野が進化してきたようです。言い換えれば、デザインによってより便利な時代を築こうというのが目標でした。
そして今はインターネットの時代です、モノ余りの時代です、環境保護の時代でもあります。さあ、これからのデザインとは? そんなに簡単に次世代へのデザインの回答は見つからないかもしれません、ですが、その状況を先回りしてみることはできそうです。インターネットの時代とは、言い古されたことではありますが、訪問者である個人が情報発信者との間でコミュニケーションをとることが可能なだけでなく、逆に誰もが発信者になれるということです。言い換えれば、今後ますます進むであろうマスメディアからナローメディアな時代への移行にともなって、発信者は自らが想うこだわりを訪問者との間で共有できるよう情報を編集し、訪問者が欲しいと思う情報に確実にたどり着けるように構造をデザインすることが重要です(簡単ではありませんが)。
発信者と訪問者それぞれのニーズが影響しあうインターネット「情報」の世界
情報を探す側には、たぶん現在普及しているような閲覧ソフトより、もっともっと簡単に検索でき、概要がおおまかにわかるソフトが必須だと思います。情報を発信する側にとっては情報の整理が必要です。どんな人にどんなことを伝えたいのかをちゃんと整理、編集できるかです。これには法則といったものはありません。コンテンツ(内容)ではなく、コンテクスト(脈絡)のほうがずっと重要だと思います。想い描いた訪問者に対して、もてなしの心と相手を思ん図る気持ちを、そこに正しく埋め込めたら最高だと思います。このデザインがとても難しいのも事実です。なぜなら星の数ほどもあるウエッブサイトでそれがちゃんとできているのはほんの一握りのように感じます。特に個人ベースのサイトにはひとりよがりな構造が多いのもそれを物語っています。
イラスト
結局は発信者と訪問者との出会いにお互いが何を求めるかが大きな鍵となります。そうやって考えてくると相互に影響しあう、もしくは訪問者のリフレクションが発信者に伝わる構造もいいかもしれません。離れているのに、いつの間にか横のつながりができ、コミュニティが形作られる、そのようなことを念頭に、ひとりよがりタイプを脱した、少しでも横との連携がとれるように念じれば、新しいコトがそこから発見できると思います。まだまだこのメディアは黎明期にいるのですから。
初めてのこの項は少し概念すぎたようです。次回はもう少し実際の問題を探求したいと思っています。
猪股裕一 (いのまた・ゆういち)
1948年東京生まれ。日本大学物理学部応用物理学科卒。1989年、アップル・コンピューター・ジャパンの正式認定を受け、日本初のマッキントッシュのユーザーサポート組織MDN(Macintosh Designers Network)を創立。同年、世界初のデザイナーのためのマッキントッシュマガジン『MdNマガジン』創刊する。日本グラフィックデザイナー協会会員。ジャパン・パブリッシング・コンソーシアム理事長
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