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教えあい
〜子どもたち主催の「パソコン教室」は、どんな教育的意味があるのか?〜
中川一史のキーワードへの道案内
2005年までに全国のすべての学校の教室にそれぞれパソコンが入るように予定されている。こうなると、1台のパソコンを囲んで子どもたちがわいわいと教えあいながら使う姿が想定される。

では、教えあうということからどんなことが見えてくるのかを、実際の小学校の教えあいの活動から考えていきたい。

事の発端
某小学校で事件がおきたのは、2学期の半ばころだった。2年生の教室前の空きスペースに置いてあったパソコンの日本語が読めなくなった(これはちょっとパソコンをかじっている方ならおわかりと思うが、日本語入力関係のファイルを捨てられてしまったのだ)。そしてさらに、その2年生のグループの子どもたちが一生懸命描いた絵のデータなどがとなりのパソコンから消えてしまっていたのだ。しかも、きれいに並べてあったフォルダもめちゃくちゃになっていた。クラス内は騒然としたが、どうやらこのごろ頻繁に出入りしている1年生の仕業と断定(?)したようだ。

さっそくクラス内でこのことが話し合われた。はじめは「使い方を知らない1年生は使うべきではない」という強行意見も出た。しかし、「自分達だって1年生の頃はメチャクチャやっていろいろと騒ぎになった」「はじめっから知らないのは当たり前じゃないか?」という発言が続いた。さらに、「どの学年の人もやりたいのは同じだ」「使い方を知らなかったら使わないんではなく、知っている僕たちが教えてあげればいい」という流れになっていく。つまり、教える機会をもつということは、1年生にとっても使い方を教わる良い機会になるし、教えることによって今回のようなトラブルも未然に防げると判断したようだ。

また、1年生から「(2年生以上のお兄さん・お姉さんが使っていて)十分にパソコンにさわることができない」という苦情も出ていた。

こうして2年生による1年生のための「パソコン教室」が行なわれることになった。

パソコン教室は始まったけれど…
さっそく「どうやってパソコン教室を開くのか?」について話し合いを持った。ところが、子どもたちからは「いつパソコン教室をやるのか?」ということだけが出されたにとどまった。つまり、クラス内で1年生の時からいろいろと友達に教えてきているという自負がある。「ガタガタ細かいことを相談しなくてもしっかり教えられる」ということらしい。とにかく、某小学校には1年生は全部で5クラスある。これを授業時間内に教えていくのは結構しんどいんじゃないかということで、「パソコン教室週間」を1週間設けて受け入れることにした。話し合いはスムーズ(?)に進み、ポスターを1年生の各教室に貼りに行き準備万端!パソコン教室初日の休み時間を迎える。

多くの1年生が2年生の教室に集まってきた。もちろんパソコンを教えてもらうことめあてである。2年生の先生が手取り足取り教え始める。実にテンポ良く教えている。どのパソコンでも1年生にもマウスを持たせているようだし…。しかし、休み時間を終えて教室を出ていく1年生の表情が冴えない。それは2年生の子どもたちの何人かも気がついていたようだ。

「先生、1年生がね、よくわからなかったって…」S君が口火を切った。気がつかなかった子どもたちからは「そんなことないよ!いっしょうけんめい教えたよ!」という声が飛ぶ。「でもね、インターネットのことぜんぜんわからないから何やってんだかわからないって途中で帰っちゃったよ」「本当はゲームのこと教えてほしかったんだって」2人の女の子の発言が決定打になった。

ここではじめて多くの子どもたちが1年生の実態(願い)と自分たちのやったことのズレに気づいた。
 

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