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キーワードで読む情報教育 12
情報TT教師
〜メディア機器の活用、どうして進まない?〜
中川一史のキーワードへの道案内
先日、ある研究会で、担当者以外になかなかコンピュータの活用が進まない状況を切々と語った教師がいた。

話の内容をかいつまんで言うと、以下のようだった。

なかなかコンピュータルームの開放に他の先生方が賛同しない。
つまり、いつも「鍵のかかった状態」である。
「コンピュータが壊れてしまったらどうするんだ」ということがその理由である。
ここにきて自分のコンピュータを購入する先生が増えた。
しかし、なかなかコンピュータを活用した授業に発展しない。
活用例を紹介すると聞いてはくれるが、それが即実践、ということには結びつかない。
その研究会では、どこの学校もそのような状況は脱しているので、みんな「大変だね〜」と同情的だったが、当の本人は笑えない状況だった。いくらその場で共感を得ても、明日学校に帰れば四面楚歌なのだ。これだけコンピュータが整備されている状況においても、いっこうに改善されない多くの学校の状況を垣間見た気がした。

さて、この状況を脱する手だてにはどのような「やりくち」があるのだろうか?

トップダウンからのアプローチ
1)情報TT教師を配置している自治体がある
今回のテーマである情報TT教師が各校に1人ずつ担任をはずれて確保されていることがベターだ。もちろん、学校事情で何か(図工専科とか教務など)と兼任で情報TTに据える場合もあるだろう。しかし専任であれば、機器のメンテナンスだけでなく、授業での活用について、見通しをもって担任に「次のこの授業でこういうふうに活用してみたら?」とすすめてくれたり、授業中は情報TT教師がスキル的なアドバイスを子どもたちにして、担任は内容を進めることに集中できたりするわけだ。しかし、これには予算確保の面からなかなか多くの自治体では実現されていない。

2)公開授業の指定を受ける

参加した他の学校のある先生が発言した。「私の学校も2年前までは同じ状況だった。しかし、情報教育の公開の指定を受けたがために、まったくコンピュータとは縁の遠かった多くの先生方もコンピュータを使った授業をやるようになった。」つまり、「やらざるをえない状況下に置かれること」が一番だ、というのだ。これはやりくちとしては、荒治療だ。しかし、切実感ということでは大きなインパクトをもつ。もちろん、場合によっては拒否反応も大きく逆効果になることもある。しかし、発言してくれた先生の学校では「いったん自分が使えるようになると、今は抵抗感なく使っている先生が多い」そうだ。何よりも、子どもたちがなんの構えもなく、あたりまえのようにコンピュータを使っていること。子どもたちもある意味レベルアップしていったわけだ。

3)教育委員会からの圧力
なにやらぶっそうな言い方だが、トップダウンといえば教育委員会を連想する方も少なくないだろう。もちろん、心ある多くの教育委員会の関係者は高飛車に出ずに、現場の声を謙虚に受け止め、やれることをやっている。でも、それはそれとして、上記のカンフル剤という意味あいで半強制的に研修をやったり、活用を求めることもあるだろう。ある小さな市では、全教員対象に実施しているところもあるようだ。追い込まれ使ってみると、その活用の場面も見えてくる、という考えからだ。また、たとえ担当者が授業でコンピュータやインターネットを活用していこうと思っていても、「コンピュータが壊れたらどうするんだ?」「インターネットは有害な情報が多いと新聞に載っていたぞ。そんなものを子どもたちに触れさせるのか?」と、せっかくのやる気をそいでしまう管理職も少なくないようだ。情報教育の理解という面で、管理職に研修を課している地域も増えているのはわかる気がする。

4)総合的な学習のカリキュラムに位置づけてしまう
今後、総合的な学習の「調べたり、まとめたり、発表したりする場面」でコンピュータやインターネットを活用する場面は増えてくるように思う。ならば、自分の学校のカリキュラムに「総合でねらう力」の一部に位置づけてしまう手もある。ただし、「コンピュータの操作を教えればそれでオシマイ」と勘違いされないようにすることは大事だ。

ボトムアップからのアプローチ
1)鉄は熱いうちに打つ
はじめにご紹介したような「使うことに腰をあげない先生」はどこにでもいる。しかし、何かをきっかけに「ちょっと活用してみようかな?」と腰を上げようとするタイミングがやってくることがある。そんな時は即担当者が対応してあげることが大切だ。「忙しいからまた明日ね」と言ってしまったら、もう二度と腰を上げなくなってしまう、ということもよくある。このへんは情報TT教師の役割でもあるわけだ。

2)でもあまり手は貸しすぎない
逆に、ちょっとやる気になった先生には手を貸しすぎないことが大事だ。できるだけ本人あるいはクラスの子どもたちで解決するのをサポートすることに徹する。頼られすぎると、次年度になり、情報TT体制がとれなくなったとたんにコンピュータの活用もやめてしまうことになる。

3)学習環境を工夫する
なんといっても面倒にならない学習環境の工夫は大事だ。担当者をよんでこなくても、コンピュータに作動する番号のシールが貼ってあるとか、デジタルカメラがいつも充電されていて、取りやすい場所にまとめて置いてあるとか、だ。また、担当者のクラスが高学年だったら、得意な子どたちが他の教師への先生になることがあっても良い。先生がわからなくても、子どもたちが知っているという状況を作ることも良いかもしれない。

4)仲間を増やす
どんなにがんばっても、どんなに人望があっても、1人でやるには限界がある。それに1人に頼っている学校はその担当者が異動になったら、それでオシマイ、なんてことはよくある話だ。やはり、仲間を作っていくのが大事だ。できるなら、ちゃんと校内で組織化していくことがベターだ。

いろいろと述べてきたが、学校の状況やメンバー構成によって、打つ手もさまざまだ。自分の学校にあったアプローチを模索してみよう。
中川一史(なかがわひとし)金沢大学教育学部教育実践総合センター助教授
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