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実践事例<メディア創造力を高める国語科授業>

クイズに答えて「どうぶつの赤ちゃん」カードをゲットしよう!(デジタルコンテンツや図書資料から得た情報をもとに,カードにまとめたりクイズにしたりする)

光村1年下「ちがいをかんがえてよもう「どうぶつの赤ちゃん」

学習のゴール

デジタルコンテンツや図書資料から得た情報をもとにまとめたお気にいりの動物の「赤ちゃん(紹介)」カードを、クイズを出し合って交換し合う。

身につけさせたい力

1) 動物の赤ちゃんについて興味をもち、情報を集める。
2) それぞれの赤ちゃんの相違点や共通点を考えながら、書かれている事柄を正しく読み取る。
3) 挿絵や写真などを見て、イメージを膨らませながら読む。
4) 動物の赤ちゃんについて、デジタルコンテンツや図書資料をもとに、めあてに沿ってまとめる。
5) 自分のお気に入りの動物の特徴をとらえて、クイズにする。
6) 友だちの書いたカードの内容のよいところを見つけたり、自分ができるようになったりしたことを振り返る。
1)2)は従来の国語の単元目標、3)4)5)6)はメディア創造力

メディア創造力を高める学習のプロセス

A.全体の指導計画 (14時間)
1時間 ねらい 題名やこれまでの経験から生き物の赤ちゃんについて話す中で学習に対する意欲をもつ。
学習活動 ・全文を通読する。
・初めて知ったことや不思議に思ったことを出し合う。
・読みのめあてをつかむ。
具体の評価規準 動物の赤ちゃんについて興味をもっている。(関・意・態)
評価方法 発言内容の把握/しってるよカード
2時間 ねらい 初めて分かったことや不思議に思ったことを出し合い、第1段落から読みのめあてをつかむ。
学習活動 ・生き物の赤ちゃんについて知っていることを発表し、
 簡単にカードにまとめる。
・教師の範読を聞く。
具体の評価規準 感想や問題をもち、読むめあてをもっている。(関・意・態)
評価方法 発言内容の把握
3時間 ねらい ライオンの赤ちゃんの生まれたばかりの様子を読み取る。
学習活動 ・ライオンの赤ちゃんの生まれたばかりの様子をまとめる。
・感想や考えたことを発表する。
具体の評価規準 ライオンの赤ちゃんについて書かれている通り
読み取っている。(読む)
評価方法 教科書のサイドライン/発言内容把握
4時間 ねらい ライオンの赤ちゃんが大きくなっていく様子を読み取る。
学習活動 ・ライオンの赤ちゃんの成長していく様子をまとめる。
・感想や考えたことを発表する。
具体の評価規準 ライオンの赤ちゃんについて書かれている通り読み取っている。(読む)
評価方法 教科書のサイドライン/発言内容把握
5時間 ねらい ライオンの赤ちゃんを読んで感じたことを話し合い、感想をまとめる。
学習活動 ・ライオンの部分の全文を読む。
・ライオンの赤ちゃんについて分かったことを表にまとめ、
 思いをもつ。
具体の評価規準 赤ちゃんについてめあてにそって正しく内容をまとめている。(書く)
評価方法 学習カードの記述内容
6時間 ねらい しまうまの赤ちゃんの生まれたばかりの様子を読み取る。
学習活動 ・しまうまの赤ちゃんの生まれたばかりの様子をまとめる。
・感想や考えたことを発表する。
具体の評価規準 しまうまの赤ちゃんについて書かれている通り読み取っている。(読む)
評価方法 教科書のサイドライン/発言内容把握
7時間 ねらい しまうまの赤ちゃんが大きくなっていく様子を読み取る。
学習活動 ・しまうまの赤ちゃんの成長していく様子をまとめる。
・感想や考えたことを発表する。
具体の評価規準 しまうまの赤ちゃんについて書かれている通り読み取っている。(読む)
評価方法 教科書のサイドライン/発言内容把握
8時間 ねらい しまうまの赤ちゃんを読んで感じたことを話し合い、感想をまとめる。
学習活動 ・ライオンの部分の全文を読む。
・ライオンの赤ちゃんについて分かったことを表にまとめ、
 思いをもつ。
具体の評価規準 赤ちゃんについてめあてにそって正しく内容をまとめている。(書く)
評価方法 学習カードの記述内容
9時間 ねらい 赤ちゃんの様子の違いを比較して考えをもつ。
学習活動 ・全文を読み返す。
・2つの動物の赤ちゃんの違いを発表する。
具体の評価規準 様子の違いに着目して考えをまとめている。(読む)
評価方法 発言内容の把握
10時間
※見る
ねらい 他の生き物の赤ちゃんについて調べる。
学習活動 ・自分の好きな生き物の赤ちゃんの読み物を読む。
具体の評価規準 簡単な読み物を選んで読む。(関)
評価方法 様子の観察
11-13時間
※つくる
※見せる
ねらい 「赤ちゃんカード」とクイズづくりをする。
学習活動 ・カードに絵と紹介する文を書いてまとめる。
・カードの内容をもとにクイズを作る。
具体の評価規準 読み取りの視点をおさえている。(読)
評価方法 赤ちゃんカード/クイズカード
14時間
※見せる
ねらい 「動物の親子カード」の交換会を開く。
学習活動 ・クイズを出し合って、カードを交換し合い、
 活動を振り返る。
具体の評価規準 ほしいカードの内容を読み取っている。(読
評価方法 様子の観察
B.実践の流れ
カードにする動物を決めよう。 
※10時間目
デジタルコンテンツや図書資料から、「生まれたばかりの様子」「大きくなっていく様子」を読み取り、カードにまとめよう。※11・12時間目
カードを読み合い、アドバイスしよう 
※11・13時間目
まとめたカードをもとに、クイズをつくろう。 
※13時間目
クイズに答えて「赤ちゃんカード」をゲットしよう。 
※14時間目
活動のよさを振り返ろう。※14時間目 

「メディア創造力」の評価

この単元は国語の学習であるが、単に教材文を正しく読み取ることを目的としていない。もちろん、カードをつくり、交換し合うだけが目的でもない。
子どもたちは、動物のクイズを出し合って、お気にいりの動物の「赤ちゃん(紹介)」カード」をゲットするという課題を持つことで、図書資料やデジタルコンテンツから、カードに必要な情報を、教材文の読み取りの視点をもとに読み取ろうと意欲的にかかわる様子が見られた。そして、友だちがほしがるような「赤ちゃん(紹介)」カード」を書こうと、知識を生かし思考を働かせていた。ここで、友だちや教師の評価を入れることで、子どもたちは教材文にもどり、カードの内容や挿絵をさらに分かりやすいものにしようと工夫した。やはり、教師がA評価を与えたカード(参考作品1)は、人気が高く、一人3枚コピー印刷をして交換会に臨んだのであるが、ほしいという子どもたちが続出したため、増す刷りをすることとなった。
このような授業をデザインする教師の着目点として、本単元では
1) リアルで必然性のある課題を設定する
2) 好奇心や探求心、発想力、企画力を刺激する
3) 本物に迫る眼を養う
4) 自分なりの視点を持たせる
5) 差異やズレを比較し、実感させる
6) 映像と言語の往復を促す
8) 建設的妥協点(=答えが1つではない)
10) デジタルとアナログの双方の利点を活かす
11) メディア創造力を追究する中から基礎・基本への必要性に迫る
12) 自らの学びを振り返らせる
があげられる。
単元によって、教師の着目点に違いがあるのか、あるいは私が「メディア創造力」育成の授業デザインをする際に、大事にしたと考えている視点なのかは、他の先生方のご実践、自分の他の単元における実践を比較してみないといけないと考えている。
さらに、ここでの子どもたちの興味・関心は、生活科の学習「みんな大すき〜わたしのかぞく編〜」へと移っていった。「自分の生まれたばかりの様子」や「大きくなっていく様子」を取材したり、写真を集めたりして、それをもとに「○○の赤ちゃん」カードを書いた。動物カードを書いたときには出てこなかった「名前の由来」や「両親の赤ちゃんが産まれてくるのを待ち望んでいた気持ち」なども書かれており、子どもたちが国語での学習に留まらず、自分を見つめ直す活動へとつながっていったことが分かる。
また、クイズ作りで「わたしはなんでしょうクイズ」に挑戦した子が少なかったため、国語の次の教材は「わたしはなんでしょう〜クイズを作ろう〜」にした。できなかったことをできるようにしようと、子どもたちは意欲的に取り組んだ。クイズにする題材も、1つ目は「動物」とし、「動物の赤ちゃん」カードの内容を生かせるように配慮した。ヒント1では、みんんが「なんだろう?あれもそうだ、これもそうだ」といろいろ考えを巡らし、ヒント2である程度範囲を狭められるようなクイズづくりができるようになった。
わたしはなんでしょうクイズ〜どうぶつ編〜
◎  わたしは、みみが大きいです。
わたしは、はなをじょうずにつかいます。
わたしは、なんでしょう?
◎  わたしは、生まれたばかりのときは、おかあさんににていません。
わたしは、生まれたばかりのときの毛のいろはちゃいろですが、10か月たつとおとなの毛にはえかわります。
わたしは、なんでしょう?
このように、「どうぶつの赤ちゃん」を学習することで培われた興味・関心や問題意識が、次の単元や教科につながり、子どもたちはどんどん自分の力を切り拓くていく姿を見ることができた。これこそ、「メディア創造力」育成の授業で身につけた学ぶ力だと感じている。
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