デジタル表現研究会
D-projectとは? D-allメーリングリスト サイト検索 ホーム
D-project
D-projectのあゆみ
メディア創造力を育成する実践事例
ワークショップ
ユネスコプロジェクト
教材作成
調査研究
カリキュラム検討
ネットdeカルタ
卒業アルバム作成
先生の道具箱
全国に広がるD-project
D-project アーカイブス 情報教育徒然草
バックナンバーへ 
情報教育徒然草〜友だちの輪〜
【第3回】
Face to "Fake"〜「模造学習」ではなく「模倣学習」を〜
田邊則彦先生(神奈川県 慶應義塾湘南藤沢中・高等部)
「福沢心訓七則」をご存知ですか?

古道具屋さんや観光地の土産物屋さんの店先で立派な額に入っているのを見かけませんか? 私が散髪する床屋(死語に近いかな?)でも、「さて、さっぱりお願いしようかな。ちょっと短めにお願いします」と言って、ケープ状の前掛け(これも死語か?)をかけ、テルテル坊主状態の滑稽な姿が写る目の前の大きな鏡に目をやると、鏡文字で
一、世の中で一番楽しく立派な事は一生涯を貫く仕事を持つという事です
一、世の中で一番みじめな事は人間として教養のないことです
一、世の中で一番さびしい事はする仕事のない事です
一、世の中で一番みにくい事は他人の生活をうらやむ事です
一、世の中で一番尊い事は人のために奉仕し決して恩にきせない事です
一、世の中で一番美しい事はすべての物に愛情を持つ事です
一、世の中で一番悲しい事はうそをつく事です
という、「福沢心訓七則」が目に飛び込んでくる。

結婚式のスピーチでも聞いたこともあるし、学校の先生方の中には「学校だより」などに引用しているケースも多いようです。試しにWebページで「福沢諭吉」「心訓」を検索してみると、結構ありますよ。

先ごろ開かれた全校保護者会で「本校ネットワークの利用について」の話をする際に、使わせていただきました。ちょっと有難いお言葉ですものね。熱心にメモを取る保護者の姿は「そうだ、そうだ」とうなずいています。読み上げてから、「この「福沢心訓七則」は福澤諭吉が書いたものではありません。偽作です。」と伝えた瞬間、「えええー」という声。

「福沢心訓七則」に関して、慶應義塾の公式ページに慶應・福澤先生関連FAQがまとめられていますので以下引用します。

Q. 「福沢心訓七則」の内容を知りたい。
A. これは福澤諭吉が書いたものではありません。その根拠について詳しくは以下の文 献をご参照ください。
富田正文. 福沢心訓七則は偽作である. 福沢諭吉全集 第20巻 付録. 慶応義塾編纂.東京, 岩波書店. p.10(1963)
富田正文. 重ねて福沢心訓について. 三色旗, No.198, p.2(1964)
富田正文. 福沢心訓七則は偽作である. 塾友, No.9, p.5(1972)
http://www.mita.lib.keio.ac.jp/service/service/f-faq.html
「剽窃」読めますか?

「福沢心訓七則」を話題にしたのは、「ネットワークを介して行われる「剽窃」について、学校は厳しい態度で臨みます」という意思表明をするためでした。本校でインターネットの教育利用を開始したのが1994年の秋、教育向けに提供されているWebページはすべて英語! ホワイトハウスやNASAのページが新鮮でした(いや、それぐらいしかなかった)。今や世界中に膨大な数のWebページが存在し、我々の生活を豊かにするのに役立っている(と、信じたい)。情報の授業では、「中には、不正確な情報や誤った情報も含まれている。情報の信憑性を確認する術を知らずに、情報を鵜呑みにしては困ったことになるぞ、『情報』が一人歩きしてしまうのだから。」と注意を与えながら利用を勧めてきたし、今後も価値情報を見抜く力・情報を読み解く力を大切にしながら積極的な利用を勧めていこうと思っている。レポートをまとめる際に引用・参考にした、著作物やWebページの扱い方に関して指導を徹底してきた。ところが、こうした情報の信憑性よりもっと重要な問題が浮かび上がってきた。それが「剽窃」である。提出されたレポートの中に剽窃レポートが散見される事態が続いた。なんとも情けない。レポートを読み進むうちに、「あれ、どこかでよく似た文章を読んだな」「情報の授業は水泳(睡眠愚)に熱中していたのに?」「そっくりさんレポートその1・その2・その3」 アメリカの大学でも最近大きな問題になっているとのこと、大学によっては電子化されたレポートを「剽窃発見ソフト」にかけているようです。学生にとって氷雪の時代となるのか? そう「剽窃」は「ヒョウセツ」と読みます。大辞林第二版には「他人の作品・学説などを自分のものとして発表すること。」とあります。

次に登場願うのは、富山県立大門高等学校の江守先生。日本の文化の表玄関は日本海側の富山・石川・新潟であることを実証されています。江守先生の勤務校富山県立大門高等学校は、100校プロジェクトの指定を平成6年に受けて以来、積極的にネットワークの教育利用を展開。高校生国際環境サミットに参加し、2001年8月には5ヶ国1地域から57人の高校生の集う富山大会を実現したところです。江守先生はCommunication, Collaboration, Creationを軸にした教育を展開。これって、本プロジェクトの核心をついているではありませんか。江守先生、富山の魚と一緒でキトキトですよ。

2002年6月12日

前回のお友達 バックナンバーへ 次回のお友達
D-project アーカイブス 情報教育徒然草