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キーワードで読む情報教育 17
続・学校間交流
〜インターネット環境の構築・行政面からの課題〜
中川一史のキーワードへの道案内
情報教育は、「社会の情報化に対応して、主体的に情報を活用していける能力を育成していくこと」とされている。その一環として、コンピュータやネットワークなどの新しい情報手段の活用がなされる必要がある。インターネットで学校間交流に活用する事例も増えてきた。しかし、情報教育におけるコンピュータ・インターネットを活用する環境はまだまだ十分ではない。

ここでは行政面からの課題について、あげていきたい。

1)インフラ整備が不十分であること
ミレニアムプロジェクトでは、2005年までにすべての学校の各教室にインターネット環境が整ったコンピュータが2台ずつ入ることになっている。

このことにより、インターネットが学校現場にどんどん入ってくることは疑う余地のない状況になってきた。とは言うものの、文部科学省の言うとおりにすべて設置されるかというと、それはNOだろう。どんなに掛け声がかかっても、結局、地方財源からの支出でまかなう部分があり、それに対応できない市町村があるからだ。しかし、それよりも困ったことは、たとえ1校に1台だけの端末がインターネットに接続されていてもそれは行政にすると、「インターネット接続校1校」にカウントされる、ということだ。現実には、これですすめている市町村の教育委員会もまだけっこうあるのが現実だ。しかし、学校にしてみれば、「とりあえず」1台だけ接続されていても活用できる範囲は知れている。学校の予算が許せば拡張(接続の台数を増やす)が可能であれば、学校裁量ということにもなろうが、条例や教育委員会の出すガイドラインで拡張を認めなかったり、利用条件がかなり厳しかったりする教育委員会も少なくない。

誰が悪いということの前に、このような現状がある、ということである。

さらに、地域での教育用ネットワーク環境をどのように実現するかは市町村の教育委員会が問われるところだろう。私がアドバイザーとして関わっている神奈川県大和市では、市内の学校の教師、子どもたちが交流できる場を積極的に構築している最中だ。遠くの学校と交流できる環境も大事だが、こうやって近くの学校と交流ができる環境は、場合によっては会う交流をからめることができる。さらに、市内の教師の情報交換が進むとそれはそれですばらしいことだ。

2)サポートはだれがやるのか?
インフラ整備も整った。子どもたちや教師の活用も当面やっていくことの共通理解がもてた。有害情報の対処を含めた教員への研修も回を重ねつつある…ではこれで万事うまくいくのか…実はまだあるのだ。それがサポートの問題だ。たとえば、学校間交流の場面でうまくメールが送れなくなった場合、何に原因があるのか?原因がわかった場合、その対処は誰がするのか?そもそもメールの送り方について、授業で活用しようとしている教師がよくわからない場合、誰が助言してくれるのか?…特にインターネット活用のために学校でサーバーを構えた場合に管理・運用を誰がするのかといった問題は切実だ。いつも気にかけていなければいけないし、誰でもわかるようにするというのは今の状況では不可能だからだ。

ではいったい誰がやるのか…現状では3つほど考えられる。

第1に「学校に出入りしている業者にやってもらう」場合だ。代理店ということもあるし、場合によっては地域のNTTの方ということもあるかもしれない。ただ、普通の学校では保守契約をしているわけではないので、多くの場合はサービスの範囲ということになろう。たまたま教師の熱い思いを感じてくれ、採算抜きで何かあったときに学校に出向いて助けてくれる業者もいらっしゃる。しかし、このことはまれなケースであると思っていた方が良い。

第2は「外部のボランティアに頼る」場合だ。国立の附属学校であれば大学との連携で教官や学生がこの役を担ってくれることもある。しかし、この場合も多くの普通の公立ではなかなかみつからない。筆者の前任校では、有志の親がネット上のサポートをしてくださった。後で述べるが、地域へどのように学校を「開いて」いくのか、といった部分は今後重要な課題となるはずだ。

第3は「教育センターや教育委員会が地域の学校をサポートする」場合だ。最近は予算をつけて市内の各学校に情報機器サポートの担当者を置く場合もある。学校にしてみると、金もかからずボランティアスタッフのように探す必要もないので、そのような意味では、この形は理想ではあるかもしれない。しかし、多くの地域では、センターのスタッフの人数とサポートしなければいけない学校の数のバランスがあまりにも悪く、思うような充分なサポートができない場合が多い。そして、この部分が不十分なために結局学校任せになっているのが現状であろう。

現実的には学校内でどうにかしてゆかなければならないのが圧倒的に多いだろう。今まで述べたように、第1から第3までの方法はそれぞれ難点があり、なかなか学校が希望するサポートを行ってくれる人材を探すのは難しい。仮にどれかでサポートしてもらっていたとしても、結局は校内でも担当者が動いていかなければ、ネットワークを活用した実践をバリバリ行うところまではいかないのだ。そう考えていくと、この役目は決して楽ではない。たいていの場合、クラス担任や担当教科をもちながらこなしていかなければいけない。その役目だけに専任であたれるわけではないのだ。

さらに、この方法にも頭が痛い点が残されている。それは、「中心になって情報教育なりネットワーク活用なりを推進していた担当教師が異動になった場合、すぐに代わりが補充できない」という点だ。公立学校ではいつまでたっても、この悩みは尽きることがないだろう。つまり、現推進担当者は、パソコンのメンテナンスやネットワークの管理・運用だけでなく、後継者を育てていかなければいけないのだ。

こう考えてくると、行政がやらなければならないことは、このような担当者になりうる教師をどのように支えていくのか、どのような担当者レベルの研修を開催すればよいのか、異動に関してどのように配慮すればよいのか、ということがあげられるだろう。

3)コンテンツ活用についての提示ができるか?
この問題は、後の学校現場からの課題にもおおいに関係してくる。インフラはまぁまぁ整っている。サポートもネットワークに詳しい教師が校内にたまたまいる。という状況がそろっても、すぐにインターネットが授業で活用されることにはならない。行政はわりと、インフラ整備・担当者の指導までが仕事範囲だと思っているふしがあるが、それでは宝の持ち腐れになる可能性が高い。どう活用するのか、どんな見通しが持てるのかを示していないからだ。「それは学校で考えるべきだ」としている地域はなかなか先に進まない。本当に何をどうやってよいのかわからないからだ。少なくとも、これからの教育委員会は、授業活用に関する研修を頻繁に行うとか、市内の学校が参加できるイントラネットを構築するとか、せめてネットワークプロジェクトや相手校の斡旋(?)を行うとかに着手するべきだろう。学校間交流においても、ネットワーク上に関連するデジタルコンテンツがあると、うまくそれらも交流学習に活かすことができる。

いずれにしても、何もできないのであれば、中途半端な導入の仕方はやらない方がよい。
中川一史(なかがわひとし)金沢大学教育学部教育実践総合センター助教授
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