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キーワードで読む情報教育 17
続・学校間交流
〜インターネット環境の構築・行政面からの課題〜
レポート2
伝えあうことで見えてくる自分
水谷浩三
(三重県 暁学園暁小学校)
「伝統工業サミット」開催!
暁小学校では5年生が「伝統工業の今を考える」をテーマに、「伝統工業サミット」と名づけた4校による協働学習を実施しました。交流オープニングテレビ会議と研究発表テレビ会議の2回のテレビ会議を含め、10時間ほどの学習計画で取り組みました。

学習の中心は、最後にテレビ会議で研究成果を参加校に伝えることを前提に、各学校それぞれが施設見学や体験学習を踏まえ、地域の伝統工業について自分の課題を決めて、課題に応じた方法で調べ学習を行い、その調査内容や自分の考えをまとめる学習でした。そして、その学習に基づき、電子掲示板で情報を交換したり、テレビ会議でまとめの発表や意見交換をしたりしました。

ハプニング!伝統工業がない…
福岡雙葉小学校は「博多人形」、石川県松任市立東明小学校は「金ぱく・九谷焼」と、いずれも有名な伝統工業です。暁小学校は地元三重県四日市市に江戸時代から伝わる「万古焼き」(陶器)です。

ところが嘉手納小学校は、担当の先生が転勤したばかりで地域の実情をよく把握していませんでした。先生がよくよく調べてみると嘉手納地区に伝わる伝統工業らしい産業がないということがはっきりしてきたのです。

交流学習も準備段階の最初からつまずき、教師一同、大変弱りました。私たちは、今回の協働学習は、地域のよさの再発見につながる学びであるし、嘉手納小学校の子どもたちにとっては、調べた結果、伝統工業がないということが分かり、そこからなぜかを考えることも大きな学びであり、他の学校の子どもたちにとっても、そういう地域もあることが分かることで多面的な思考の育成につながるだろうと考え、参加してもらうことにしました。

嘉手納小の子どもたちは、伝統工業の発表のかわりに、郷土の自然の研究発表や、昔から伝わるお菓子や伝統芸能の踊りエイサーをテレビ会議で参加校に紹介し、自分たちを大いにアピールし、参加校の子どもたちと感動を共有した交流になりました。また、参加校の中には、万古焼きを、たこ焼きのような食べ物だと勘違いしていた子どもがいたことが掲示板で分かり、暁小の子どもたちは大いに発奮したものでした。これらように交流学習では教師側も子どもたちも相手のある学習ですので、ドタバタ、ギクシャクします。しかし、これらのようなハプニングやトラブルこそ、子どもたちそれぞれが意欲を増し、考えをめぐらす深まりのある協働学習の源であるように思います。

今、私たちには何ができるでしょう。
交流の中で、伝統工業に対する学校間のとらえ方の違いによる議論といった方向も期待してはいたのですが、その方向には発展しませんでした。「伝統工業の今を考える」というテーマの特性でしょうか、子どもたちは、伝統工業に携わっている人々の仕事への思い入れや将来の夢など心情に触れ、またその努力を知り、工夫を学ぶ中で、博多人形の素晴らしさを分かってもらいたい、本物の金箔を送るからよく見て、万古焼きは土鍋の生産が日本一だよ、お菓子を作って送るからねなど、それぞれが自分たちの地域や伝統工業に誇りと自信を持ち、交流校に伝えたいという気持ちになりました。

こういった気持ちが、図や表、実物を持ち込んだ具体的な発表、三択クイズを使って興味をひく発表など、相手にわかりやすい伝え方の工夫となって現われました。そして情報を分かりやすくまとめる活動やお互いの発表を聞く中で、自分たちに何ができるかを考えるようになりました。

教師側の伝統工業を伝える人々の真摯な思いに気づいてくれたらという願いを超え、自分たちに何ができるか、それはもっともっと私たちも伝統工業をアピールしようという考えまで進んだのは単独校での学習でなく、協働学習ならではの成果だと思っています。
 

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