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キーワードで読む情報教育 18
地域での交流学習
〜遠い外国よりも近くの地域へ〜
レポート2
ディスプレイ画面の向こうはもう1つのクラスルーム
豊田充崇
(和歌山大学 教育実践総合センター専任講師)
美里町は四千人程の小さな町ですが、「まちおこし」の一環として町全体の情報化推進を掲げ、町内の4つの小学校、2つの中学校(それぞれ全校生徒95人と20人)にTV会議システムとインターネット専用回線が早くから導入されました。

これまで各学校は、修学旅行、陸上記録会、マラソン大会、写生会、意見発表会などの学校行事を合同でおこなってきましたが、これらはイベント的な学校行事として扱われており、何らかの教科の学習活動を共同しておこなうことはありませんでした。そもそも授業を共同しておこなうその発想自体が生じることもなく、その必然性もありませんでした。

しかし、情報通信ネットワークが整備され一気に一般の学習活動への使い道が膨らみました。これまでできなかった学習活動面での交流をこれで補おうということになったのです。以下に情報メディアを活用した交流の活動例をいくつか取り上げます。

「貴志川共同調査」
町の中央を流れる河川の上流と下流の学校が、生態や水質の調査をおこない、その結果をTV会議と成果発表用のWeb上で情報交換しました。また、TV会議には町役場も参加し町長や河川事業の担当者とも意見を交わしました。

「合同句会」
自分たちの住む町に関する俳句をつくり、お互いがTV会議によって発表しました。発表では、その作品を思いついたきっかけやこだわりなども発表し、最終的に参加者全員の投票により優秀作品が選ばれました。

「作品発表会」
中学校同士では社会科の授業として「社会科歴史新聞」を、小中学校間では「地域の昔話を電子紙芝居にしたもの(マルチメディアスライドショー)」など、様々な作品や成果をお互いに発表しあって評価をおこないました。

「共同地域調査」
小学生による地域学習は、社会科や総合的な学習の中で綿密におこなわれるために、中学生にも役立つ発表がたくさんあり、小学生には負けてられないという刺激にもなりました。また、中学生による歴史的背景を踏まえた地域の史跡調査など少し高度な内容も、小学生には逆に刺激となります。

「入学説明会・中学生としての心得」
中学生のプレゼンテーションによる小学生への「入学説明会」です。中学校と中学校区内の3校の小学校あわせて4校が多地点TV会議システムとweb上のプレゼンを同期させておこないました。本実践は、中学生のプレゼンテーション能力向上の一環としておこなわれるために、小学生には発表のわかりやすさそのものが厳しく評価されました。

「電子メール交流」
技術科「情報とコンピュータ」において、電子メール交流の相手として町内の学校同士がおこなっており、これによって、情報モラル面の学習を実践的且つ安心しておこなうことができます。授業の実施時間を合わしたり、ほぼ共通のカリキュラムをおこなうことで容易に実現できました。

「交流教育」
町内ではありませんが隣接地域の「養護学校との交流教育」においては、まずは電子メールで軽く挨拶し、Web上で学校紹介などをおこない、TV会議では実際に言葉を交わし、クイズをしたり演奏や歌を披露して徐々に親睦を深めていきました。その後、学校に招待してゲートゴルフで遊んだり、お弁当を食べたりもしました。以後も、電子メールや実際の手紙によって、近況を報告しあっています。ネットワークを介した事前交流によって、対面活動をおこなう日がより充実したものとなり、それが事後交流によって継続されていったといえるでしょう。

以上のようにいくつかの地域の学校との交流学習の例を取り上げましたが、交流学習が成功する秘訣は、情報通信設備環境面での充実はもとより、それを扱う担当教員同士の共通理解や目的意識があること、そして子どもたちにとっては、誰かに見てもらいたい、伝えたいという思いが生じる学習活動があることなどが前提として考えられます。また、同じ地域内という安心感や実際の対面活動への発展の可能性があることも重要な要素になると思います。今後は、総合的な学習の完全実施により、ますます地域内の学校間交流の需要は高くなると考えられますが、教師がお膳立てする交流ではなくて、子どもたち自身が地域内の学校は1つのコミュニティだという意識を持って、自主的に取り組める交流でありたいと考えています。
 

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