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先生の道具箱 ホンモノパンフレット制作
 
授業報告【第13回】
完成!そしてゴール!!
授業のねらい

ついにホンモノパンフレット制作プロジェクトは、ゴールを迎えました。総合的な学習に限らず、何かの取り組みのゴール場面において、子ども達が味わう達成感、成就感はとても重要です。それが次の学習活動への原動力になるからです。このプロジェクトの成果物としてアドビの北川氏は、きちんと印刷されたホンモノのパンフレットを子ども達にもプレゼントすることを約束してくださいました。これが子ども達の最も大きな達成感になることを、金沢大の中川先生ははじめから指摘されていました。
授業の様子
(2分55秒)
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完成したホンモノパンフレットのデータをアドビ本社へ送り、待つこと約1ヶ月。3月17日にずっしりと重い荷物が学校に届きました。その中には、子ども達が作ったPhotoshop Elements 2.0のホンモノパンフレットが、100部入っていました。それを5年3組の子ども達の待つ教室へ持っていきました。どの子も待ちきれない様子です。じらすのもかわいそうなので、話は抜きにしてさっそく配りました。「ぼくの顔が写ってる!」「きれいな紙やな〜!」なんて言いながら、友達どうしでワイワイガヤガヤと楽しそうにパンフレットをながめていました。ちかちゃんは「わたし達みたいな子どもでも、みんなで協力したらこんなすごいものができるんやな〜」と思いました。

 
完成を喜びあう子ども達   しみじみ見つめるちかちゃん

しばらくたってから、ホンモノパンフレットの今後の扱いについて説明しました。まずこのパンフレットは10000部印刷されたこと(その後増刷される可能性もあり)、今後全国の都道府県および主要都市の教育委員会、教育センターなどへ送られる、または教育関係セミナーや教育関係の展示会で配られるということを話しました。すると、つばさ君が「これでPhotoshop Elementsの売れ行きが悪くなったら、ぼくらが作ったパンフの出来が悪かったってことやな〜」とつぶやきました。もう子ども達の意識は、ホンモノパンフレットの市場への影響に向いているようです。そこで子ども達が作ったパンフレットがPhotoshop Elementsの売れ行きにどう影響したかを、北川さんに後日調べてもらうことにしました。

家に帰ってからつばさ君は、完成したパンフレットをお父さんお母さんに見せました。お母さんは「つばさはどの部分を担当したの?」と尋ねました。つばさ君は、自分の手が加わっている部分を自慢げに説明しました。お父さんもパンフレットにでかでかと載っている息子の姿を眺めながら、すごくうれしそうでした。でもつばさ君は、もっと自慢したい気持ちになりました。そこで次の日曜日、彼は自転車を走らせて、近くにすむおじいさんとおばあさんにホンモノパンフレットを見せにいったのです。孫の自慢話を聞いたあと、おばあさんは「つばさがこんなすごいものを作れるなんて思わなかったよ!」とほめてくれました。つばさ君は、また心の中がいい気分になりました。

これで、めでたしめでたし!

となるはずでした。ところがこのあと、5年3組の子ども達にとんでもない任務が言い渡されることになるのです。実は3月26日(水)に、京都リサーチパークでD-projectの春の公開研究会が催されることになっていました。その全体会で、子ども達自身によるホンモノパンフ制作発表プレゼンテーションをすることになったのです。さっそく子ども達の中から、9名のプレゼンテーターが選ばれました。その中にはあかねちゃんやつばさ君、ちかちゃんも入っています。本番までは1ヶ月しかありません。練習は放課後などを使って行いました。発表時間は約30分間。プレゼンテーションの流れに沿って役割分担をして、発表内容をそれぞれ組み立てていきました。パンフレットサンプルの説明をする子どもは、自分達の作品のどこがウリで、苦労した点はどこかが伝わるように工夫をさせました。また制作過程を説明する子どもには、ブラッシュアップ前とあととでどんな違いが生まれたか(ビフォーアフター)がしっかり伝わるように組み立てさせました。ちかちゃんとつばさ君は、これまでのプレゼンテーション全てでプレゼンテーターを経験しています。そのため、だれよりも早くプレゼンテーションの組み立てができて、リハーサルに入りました。あかねちゃんは、「最後の詰め作業」の部分の発表担当になりました。ここは“読み手の目の動きを意識してレイアウト変更する”という、すごく大切なところです。レイアウト変更の前とあとの図を使いながら、どんな風に話せばうまく伝わるかを彼女なりに考えながら組み立てていきました。

満員の全体会場
そして迎えた本番の日。京都リサーチパークに到着して発表会場に入った子ども達は、そのあまりの大きさに思わず「すっげ〜!」と驚きの声をあげました。京都リサーチパークは、京都でも最大規模のコンベンション施設です。この日の全体会は、収容人員350名という「バズホール」で行われました。午前9時に全体会がスタート。ホールは、全国から集まってきた小・中・高校の先生、および情報教育関係者でほぼ満員状態です。

本番まで子ども達は、別室で待つことになりました。ちかちゃんは、今日も発表順が1番でした。しっかり練習してきたつもりなのに、「途中で発表が詰まったらどうしよう・・・。」と不安な気持ちがよぎります。どの子もちかちゃん同様、かつてない大きな不安と戦っていました。

発表が始まりました。ちかちゃんから始まった子ども達のプレゼンテーションは、何の問題もなく進んでいきました。さすがは本番に強い子ども達です。会場いっぱいに集まった参加者も、子ども達の発表を時にはうなずきながら、時には笑いながら聞いてくださいました。

 
ちかちゃん   あかねちゃん

もちろん会場には、アドビの北川氏の姿もありました。このところホンモノパンフの話題になると、必ず涙腺がゆるむという条件反射状態が続いていたそうです。案の定、この日もウルウル状態の北川氏でした。
   
30分間のプレゼンテーション終了後、質疑応答となりました。会場の先生から「取り組みを続ける中で、途中でやめたくなったことはなかったですか?」と質問がありました。それに対してつばさ君は、「絶対に僕達の作品を採用してほしかったので、やめたくなることはなかったです!」と答えました。

堂々と質問に答えるつばさ君

京都リサーチパークから帰る途中、ファミリーレストランに立ち寄って打ち上げ(?)となりました。このご褒美は、担任の山田教諭と子ども達がかねてから交わしていた約束だったのです。大きな仕事をやり終えて、9名の子ども達は開放感200%状態です。山田教諭は、タクシーの中からすでにいやな予感を感じていました。

「わたしはスパゲッティ カルボナーラとメキシカンタコスとクリームソーダ!」
「ぼくは牛タン御膳とからあげとコーンスープと・・・」

普段、家族と行くときより多いに違いない子ども達の注文量に、山田教諭は自分の顔が引きつっていくのを必死で我慢していました・・・。
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先生の道具箱 ホンモノパンフレット制作