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  ふり返ってみれば,長い取り組みでした。でも,こんなに長いにもかかわらず,軸のぶれない活動になったのはなぜだろう・・・と思います。その大きな理由として,ゴールが子ども達にとって明確だったということがあると思います。また,そのゴールが子ども達にとって,意味があると感じられるゴールであったからだと思います。自分たちの作ったものが商品化されるということは,普段の学習ではないことです。それだけに,ゴールは揺るぎのないものであったし,どんなことがあってもたどり着かなければならないものでした。それが,良かったと思います。

ゴールを目指す途中で,子ども達が息切れする場面は何回もありました。特に36名全員となると,個々の違いもあって,遅れがちになる子どももいました。担任としては,どこまで全員で踏ん張れるかをサポートしていくことがまず一つの課題でした。やる気のある子,得意な子だけのがんばる学習ではなく,全員が伸びていける取り組みにしたかったのです。また,もう一つの課題は,子ども達がしている活動に意味づけをしていくことがありました。ホンモノパンフの取り組みにはいろいろな学習が含まれていることを自覚させたかったのです。そうすることによって,子ども達自身が目的意識を失わずに活動していけると考えました。

具体的に子ども達がつまずいた場面を思い起こしてみると,2つのことに気づきます。1つは,他教科との関わりの部分でつまずいていることです。コンピュータ操作などは子ども達にとってはじめてのことなので難しくてあたりまえなのですが,一番難しかったのは,国語科に関わる部分です。例えば,キャッチコピーを作る場面では,子ども達の語彙力がもろに影響してきます。こちらが声かけをしないでいると,ありきたりな言葉しかでてきません。「『楽しい』『おもしろい』という気持ちを違う言葉で言い表してごらん。」「『子ども』から何という言葉が連想できる?」などの具体的なアドバイスが必要でした。また,パンフのベータ版作りでは,一つ一つの項目に見出しをつけてまとめることに子ども達は悩みました。この力は,国語科での「要約する」という力に他ならないのです。またプレゼンテーションの原稿を考えるときには,相手を意識した文章を書かなければならないというのも,大変な苦労でした。これも,国語科の作文のねらいの一つです。これらのことから,総合科としての活動であったパンフ作りも,他教科の関わりが大きく,それぞれがそれぞれに生かされていくことを感じました。

もう1つのつまずきは,友達とのコミュニケーションの部分です。実践報告の場でもいくつかご紹介しているとおり,子ども達はこの活動を通して何回もけんかをします。グループで一つのものを作り上げる経験は,よく考えてみると,意外とありそうでないのです。お互いに思っていることを出し合って,折り合いをつけながら一つに作り上げていくことはとても難しいことでした。特に友達を意識しはじめる高学年の児童にとって,本当に言いたいことをうまく伝えることがなかなかできませんでした。けれども,泣いたり怒ったりしながら,自分の気持ちを伝え合ったとき,友達と協力するということを学んだのではないかと思います。また,そんな姿をお互いに見合っていることが,「友達もがんばってたし,わたしもがんばろうと思った。」という意欲につながっていたと思います。

これらのつまずきを何とか乗り越えて活動を終えました。

このプロジェクトをはじめるにあたって感じていた,「長い活動時間に見合う活動ができるだろうか」というわたしの不安は,満足感に変わりました。それと同時に自分のなかであやふやであった「総合科」は,他教科のねらいを含むだけでなく,子ども達の生活そのものを巻き込んだ本当に「総合」的な学習であるということを考えさせられました。

担任の対応として,まだまだ未熟で反省点もあるのですが,このプロジェクトを通してわたし自身も大変貴重な経験ができたと思っています。お世話になった北川さん,中川先生をはじめ,多くの方々に大変感謝しております。ありがとうございました。
 
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