デジタル表現研究会
D-projectとは? D-allメーリングリスト サイト検索 ホーム
D-project
D-projectのあゆみ
メディア創造力を育成する実践事例
ワークショップ
ユネスコプロジェクト
教材作成
調査研究
カリキュラム検討
ネットdeカルタ
卒業アルバム作成
先生の道具箱
全国に広がるD-project
D-project アーカイブス 情報教育座談会
シリーズ1 今、なぜプレゼンテーション能力なのか?  1 2 3 4
 
失敗を通じて学ぶことから前進する
田邊:プレゼンテーションでは、誰かがやっている場面を見る立場もあります。上手な発表をする友だちを見て「こうやればうまくいくんだ」と理解したり、失敗した例を見て「どうして失敗したのかな。あそこを工夫すればよかったのに」と感じることでどんどん上手になっていく。要は場を与えてやることでしょう。

中川:さて、コンピュータを使うとなれば、ソフトの問題もはずせない。この点について、プレゼンテーション・ソフトを提供する側の村岡さんのお考えは?

村岡:6、7年ぐらい前まではパソコンは習得するもので、難しければ難しいほどよく、多機能であればあるほどいいソフトというのが常識だったんです。でも時代とともに、ソフトが簡単であることにも価値があるというように変わっていきました。そこで、小学生向けソフトの企画に当たって、操作性のやさしい、マニュアルを見ないで使えるソフトが理想と考え、「はっぴょう名人」を作ったんです。分かりやすさのために機能も大胆に絞りました。ソフト会社として機能を絞るのは勇気のいることですが。
「日本の子どもたちは自分の意見に自信がない」「伝達力の育成には一年生からの積み重ねが大事」 佐籐幸江氏
  佐籐幸江氏
田邊:表現はシンプルなほど、伝えたい情報量が明確になりますよ。例えば「スライドショー」を使えば、さまざまな効果を入れられます。子どもたちはおもしろがって1枚目と2枚目で異なった効果音を入れる。確かにプレゼンテーション自体はにぎやかになりますが、何を言いたいのかぼやけてしまう。それに気付いた子どもたちはすごくシンプルなプレゼンテーションを作り始めるんですね。

村岡:そのためには、ゴテゴテのプレゼンテーションで、一度失敗してみないと実感できないかもしれません(笑)。

田邊:上級生が示した上手なプレゼンテーションを真似する。あるいは失敗したプレゼンテーションを見て、そうならないように工夫する。その意味で学校は、失敗を通して学んでいくことが許される場ですから、いろいろな経験をさせるべきでしょう。

中川:「失敗を学ぶ」と聞き、うなずいてしまったのですが、その発想を教師にも応用できるかな。

佐藤:耳が痛いですね(笑)。今までは教科書があり、指導書があり、それらをうまく流していくのが上手な先生と言われてきました。そのなかで、子どもたちの失敗は許されなかった。教師の指導案からはみ出る子どもは困った子と言われてきたので、私たち自らがはみ出るというのはすごく大変なことです。
発表の場を重ねて評価する力も育成
村岡:企業でも一番問題なのは、失敗をなかったことにしてしまうことです。プロセスを細かく検証すれば、失敗のないプロジェクトはありません。

中川:つまり、「失敗は悪いことではなく、教師自身がそういう経験をすることも大事」というわけですね。そして、その価値を認め、活動のなかに埋め込んでいく。そのためにはまず発表を行い、評価していく。これがプレゼン能力の育成につながるのでしょう。

田邊:その際、ポイントになるのは評価の仕方かもしれません。今までは、子どもたちが最終的に出してきたアウトプットに対して「よくできた」や「もうちょっと頑張ればよかった」という評価を学校が与えてきました。これからは「子どもが自分で認める評価」「友だちに失敗を指摘してもらう評価」が重要になってくると思います。

中川:いろいろな発表経験の場を持たせ、最終的には子どもたちが選ぶという意見を聞き、小学校としてどうですか。

佐藤:同感です。うちの学校の時間割を工夫し、90分、70分、70分で、真ん中に生き生きタイムと中休みがあって、子どもたちが自由に使える時間が四十分あります。そこでクラス発表を盛んに行っています。といっても形式ばったものではなく、子どもたちが何かをやりたいときにやるようなものです。
 そこで一年生が六年生の影絵を見て、「きれいだな」「自分たちもやってみたい」と憧れたり、六年生のポスターセッションで三年生が鋭くつっこんだりしながら(笑)、子どもの目を肥やしていくのでしょう。失敗しても「どうして失敗したのか」「なぜ伝わらなかったのか」と振り返りができて、「次はこうしよう」とつながっていく。

中川:そういう場があればあるほど、見る側も経験を重ねて力を培っていくわけですね。

田邊:相手のリアクションがライブで届くか、PCのネットワークを通して伝わるかの違いがあっても、自分が伝えたいことが伝わっているかというフィードバックは絶対に欠かせません。

村岡:佐藤先生が言われたことは授業以外にも発表の場をたくさん設けることの重要性であり、田邊先生が言われたことは、考えてそれがどうだったかを伝えるサイクルを意識するということだと思います。この二つを連携し、連続して行うことが大切なんですね。

田邊:そのためにも、プレゼンテーションのためのツールが先生方に扱いやすく、子どもたちにも使いやすいソフトがあればいいと思います。
授業風景
back バックナンバーへ  next
D-project アーカイブス 情報教育座談会