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シリーズ1 今、なぜプレゼンテーション能力なのか?  1 2 3 4
 
教科の積み重ねがプレゼンテーション力の基本
中川:その一方、中・高では教科の壁という現実があります。横のつながりをどのように実現されているか、お聞きしたいのですが。

田邊:教科の横のつながりを実現したいという願望は強いんですが、実際には、中学・高校教科担任制です。自分たちの授業のなかで発表行為に意義を感じていれば工夫をしていけますが、知識の正確さを求めるとなるとプレゼンテーション能力は置いていかれがちですね。それを補うため情報の時間では「こんなときにこんなプレゼンテーションをすると効果的な発表ができる」と子どもたちに教える。実感した子どもたちは、英語の時間に使ってみたり、理科の実験結果を発表するときに使う。あるいは、社会科の統計の時間でやったグラフ形式でまとめてみようと発展していくはずです。

中川:新しくできる情報科は、コミュニケーションの根幹になるような部分をしっかり育てようとする大きな意義がありますね。各教科のベースになる部分を扱う情報科は、他教科への波及効果も大きいと思いますが。

田邊:理想的な考え方でいけば情報科はなくなっていいんですよ。情報科学を学習するなら別ですが、本来はすべての教科の基本に組み込まれるべきもので、ツールとしてコンピュータを使っていこう、情報を共有していこうということを大切にするためのスキルや概念は、どの教科にも共通して求められると思います。
 例えば、うちの高校では模擬国連というイベントを英語科でやっています。生徒たちがチームに分かれて各国の代表に扮し、あるテーマのもと、自分の国は賛成か反対なのか。その考えをプレゼンテーションするという場面でも、どうすれば一番いいやり方なのかを真剣に考えています。

中川:子どもたちが学んだことをさまざまな形で活用している好例。

佐藤:六年生で自分の伝えたい方法を選んで、説得する力を育てるには一年生からの積み重ねが欠かせません。
 うちの学校でも盛んに校内研修をしているのですが、田邊先生がおっしゃるように情報教育はあくまでベースであり、それを取り上げて勉強しましょうというのはなく、子どもの活動に情報のエキスを入れていけたらと研究しています。
「伝えたいことが伝わった『嬉しさ』を実感させる」「発表者を観察することで自分の発表力を伸ばす」 田邊則彦氏
  田邊則彦氏
授業風景
田邊:子どもたちはプレゼンテーションのために一生懸命に作業します。もっといいプレゼンテーションにしようと改良します。「文字じゃなくて写真にしよう」とか、工夫して努力をします。その足跡を残せるソフトが欲しいと思います。

佐藤:伝えるという行為も大切ですが、その前に子どもたちが追求したい内容こそ重要視すべきです。子どもたちが「調べてみたい」「友だちに伝えたい」と思う課題を教師と子どもと一緒に作りあげる環境が不可欠ではないでしょうか。

中川:では、最後にまとめとして、大事なポイントを絞ってみましょう。まずプレゼンテーション能力を付けるためには場を与えること。そこに付随して、バリエーションを経験させ、情報教育で付けた力を教科で洗い出す。それから追求したい内容が基本にあり、そこを軽んじてプレゼンテーション能力を付けるか否かというのは本末転倒である。またプレゼンテーションの際は、リアクションが返ってくる場をどう作るかが非常に重要であるということ。
 その一方でほめたり、失敗してもいいよという雰囲気を作り、子どもたちに自信をつけさせる。それからよいツールとの出会い。発表する場も大事だが、見る場としてもどう位置付けていくかを考える必要がある。最後に、やったことについて評価したり、もっといい発表の仕方があったのかを振り返る場を持つべきだと考えます。本日はありがとうございました。
中川一史氏
司会・コーディネーター
なかがわ・ひとし 金沢大学教育学部教育実践総合センター助教授。横浜国立大学卒業、同大学大学院修了(修士)。専門は情報教育、教育工学。昨年度に続き今年度もNHK教育の学校放送、小学校情報教育番組に研究員役として出演。昨年夏、放送した「夏のテレビクラブ」では、番組の企画構成も行った。著書に「ネットワークと教育」(東洋館出版社)ほか多数。

田邊則彦氏
たなべ・のりひこ 慶應義塾湘南藤沢中・高等部教諭。慶應義塾大学文学部社会・心理・教育学科心理学専攻卒業。発達心理学を専門とし、発達障害の未就学児を対象とした教育・保育に強い関心を持つ。インターネットの教育利用に早くから着目し、模索を続ける。「21世紀コンピュータ教育事典」(旬報社)執筆メンバー。

佐籐幸江氏
さとう・ゆきえ 横浜市立大口台小学校教諭。立正女子大学(現文教大学)教育学部卒業。横浜国立大学に1年間内地留学。本年度、横浜市小学校教育評価委員・神奈川区図書館研究会部長。主な著書に「広がれ!造形活動=コンピュータの前に集まって=」(日本文教出版・共著)、「インターネットはじめの一歩」(あゆみ出版・共著)など。

村岡明氏
むらおか・あきら 株式会社 ジャストシステム ビジネス企画室室長兼、文教システム部部長。埼玉大学教育学部小学校課程国語国文学科卒。専門は国語科教育学。子ども向けコンテンツ、幼児向け教育ソフトなどを手がけ、教育用製品のビジネスオーナーとして開発を指揮する。「教育の情報化より情報の教育化を」が持論。
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