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キーワードで読む情報教育 22
美術とコンピュータ
中川一史のキーワードへの道案内  
最近の美術の教科書を見ると、コンピュータを活用した題材がどの教科書にも少なからず登場している。教科書に題材が載っていることで今後コンピュータを活用した授業が増えるのはまちがいないだろう。

たとえば、日本文教出版の「美術1」の教科書を見ると、レタリングの題材でコンピュータを活用したTシャツ作りや名刺作りが載っている。また、ユニバーサルデザインを題材とするところでもコンピュータを活用する学校も少なくないのでは、と思う。
とは言うものの、多くの教師にとっては、まだまだ縁遠いコンピュータだ。どうしてなのだろうか?

1)抵抗感の問題
まずあげたいのがコンピュータへの「抵抗感」だ。考えてみれば無理もない話だ。今までの教師経験の中で、コンピュータなど使わなくても、自分の授業をやりとげてきたという自負が多くの教師にはある。そこにきて、なぜわけのわからない「機械の箱」に身を投じなければいけないのか?だいたいどうやって使うのかもわからない、という理由だ。授業で使えるかどうかの前に、まず多くの教師にとっていったいどうやって触るのかさえもわからないのが実情だ。
抵抗感の問題の解決には2つの方法があるだろう。1つはコンピュータに詳しい人から聞ける場合だ。たとえば、自分が購入したりしても取り扱い説明書を読んでいてもなかなかラチがあかない。しかし、そんなことでもちょっと聞くとたいしたことではなかった、ということはよくあることだ。そういうアドバイザーが同じ学校内にいたら、授業での活用法まで聞くことができたり、自分が学校で使おうとしたときに具体的にアドバイスがもらえるので望ましい。
もう1つは研修を受けるという方法だ。たしかに多くの地域で教員対象のコンピュータ研修も行われてきてはいるが、いきなり「ウィンドウズ入門」などやっても、余計にわけがわからなくなってしまうだろう。それならば、楽しく「これなら私にもできそう」と思えるようなお絵かきソフト体験の方がよいかもしれない。つまり、問題はどんな研修内容であるか、だ。単に意味もなく入門研修をやっても、あまり抵抗感の軽減には結びつかない。このへんは、次の2)におおいに関係あるところだ。

2)自分の授業とのむすびつき、見通しを持てるか、おもしろそうだと感じるか?
教師はコンピュータと相対することになったときに、まず自分の授業や自分の仕事とどのようにむすびつくのかを考えるだろう。よほどの興味がないかぎり、意味もなくコンピュータをいじっていられるほど教師は暇ではない。
いったいコンピュータを使うことでこれまでの授業をどのように改善できるのか?どのようにおもしろくできるのか?どういうところなら使えそうなのか?そういう見通しを「これだ!やってみようかな?」と持てたときにモチベーションが生まれる。自分がやってきた授業場面で、もっと子どもたちが自主的に動きそうだ、もっとおもしろい授業になりそうだと感じることができたら、挑戦してみようという気も起ころうというものだ。

3)他教科との関連
コンピュータやインターネットとくると、どうも中学校では技術・家庭の一領域で、高等学校では教科「情報」で扱うので、美術教師には関係ない、というイメージがある。逆に、やりたくても、コンピュータルームが1つしかないので、使いたくても技術・家庭科の授業が優先されると使う時間がとれないということもあるようだ。そういう意味では、今後、コンピュータの台数が増えるにつれて、各校で配置場所を工夫することが必要だ。

4)環境の問題
学校内でコンピュータが縁遠いかそうでないかは、案外、校内のコンピュータ環境によるところが大きい。学校内で教師や子どもたちが「使いたいときに使えるようになっているのか」ということだ。例えば、職員室のコンピュータはいつも電源が入っているのだろうか?知っている人間がいなくても手順がわかるようになっているのだろうか?
子どもの環境でいうと、休み時間や調べ学習の時にすぐに使えるような場所にあるのだろうか?鍵のかかっている4階のはじにある視聴覚教室にしかコンピュータがないのであれば、よほどの強い意思がないかぎり使われないのではないだろうか?これは学習環境として学校内でどのように位置づけるのか、情報委員会などの校内組織でどのように考えているのかによるところが大きい。

5)サポートの問題
さて、ここからは「さて使ってみようかな?」と思ってからのことであるが・・・実際に使ってみようと思ったら、いろいろと難しいことに出くわす。情報担当の主任から使い方については習ったつもりだが、いざ授業で使ってみるとコンピュータが止まってしまった。うまくプリントアウトできない・・・よくある話だ。そんなとき、学校内にサポートしてくれる教師はいるのだろうか?また、故障に対応してくれる人的なサポートシステムは市内にできているのだろうか?メンテナンスまですべてのことを担任教師がやらなければならないのではあれば、コンピュータは学校現場には普及しないだろう。この4)はまだまだ今後の行政レベルでの努力が必要に思う。
中川一史(なかがわひとし)金沢大学教育学部教育実践総合センター助教授
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