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著作権ワンポイントアドバイス
第2回 【これからの時代に求められる情報モラル】
前回は、連載第1回として、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の活動を紹介するとともに、著作権思想の教育が民主主義教育に繋がることを、子供たちの声を紹介しながらご説明しました。連載第2回となる今回は、著作権にとどまらず、これからの時代に求められる情報モラルについて、読者の皆さんと考えていきたいと思います。

情報化に潜む危険性

前回ご紹介した「デジタル時代の情報モラルを考える著作権・プライバシー相談室『ASK ACCS』」には多くの質問が寄せられています。これらの質問を元にした次のような具体例について、その問題を考えてみてください。
A: パソコンが得意なA小学校のa先生が、ペーパーレスの連絡網として、自分が担任するクラスの児童と保護者の名前、電話番号などを自分の個人ホームページに掲載している。
B: カメラが趣味で撮影技術に長けたB高校のb先生は、自分が撮影して学校通信に使われていた生徒の写真を、b先生の個人ホームページでも紹介している。
C: 先生間の連絡用にパスワードで入る限定的なホームページを運用する情報化先進校のc先生は、パソコンが不得意なため、学校外の友人にパスワードを教えて使い方を教えてもらっている。
いずれも、他の人の創作物をコピーしたり勝手に変えたわけでもありませんから著作権とは違う問題です。しかし、それぞれ、別の問題を含んでいます。

まず、Aの例では、それが誰もが見ることができるホームページであることで、悪意を持った第三者が、保護者に扮して子供たちに電話をして呼び出すかも知れません。またA小学校に通う子供を持つ人として名簿業者が利用するかも知れません。ペーパーレスの連絡網とするなら、限られた人のみがアクセスできる環境を作る必要があるでしょう。Bの例では、自分が撮影した写真なので著作権はB先生にあり、その写真を使うことは構わないように思えます。しかし、これも誰もが見られるホームページでは、生徒の肖像権への配慮が必要でしょう。Cの例では、パスワードがさらに漏れて、学校内の情報が第三者に知られる危険性が出てきます。せっかく、パスワードで保護しているにも関わらず、それでは意味がありません。

求められる想像力とバランス感覚

以上、具体例とそれが持つ問題を示しましたが、これらは必ずしも違法というわけではありません。たとえば、Bの例では、撮された生徒が特定できない場合には別の判断ができるでしょう。Cの例では、第三者が学校の限定的なホームページにアクセスなどすれば不正行為ですが、c先生がパスワードを教えた時点では違法行為はありません。あくまで危険があるというレベルです。

このように、情報を扱う上では、違法行為ではないけれど問題がありそうだということが多々あります。そこで求められるスキルは、著作権だけではなく肖像権やプライバシー、セキュリティなど様々な問題が起こりうると考える想像力と、その問題を判断するバランス感覚です。

マナーと情報リテラシー

一方、インターネット上で手軽にコミュニケーションができる掲示板などには別の危険が潜んでいます。実生活では、初対面の相手であっても五感を使って理解しようとできますが、文字だけでやりとりする掲示板では、些細な言葉尻から大げんかに発展することが少なくありません。悪意を持って言葉尻を捉える人物もいますし、悪意がないのに、ちょっとした言葉の行き違いから不愉快な思いをすることもあります。インターネットでは、実生活以上に、ネチケットと呼ばれるインターネット上でのエチケットやマナーに気を付ける必要があります。

また、掲示板では匿名を通していたとしても、悪意を持った第三者は、それまでの断片的な発言内容をつなぎ合わせて個人を特定するかも知れません。ちょっとした知識があれば、発言者が使っているプロバイダを特定することも可能です。プロバイダが特定されれば大まかな居住地が知られる場合もあります。さらに、Webサイトによっては、何月何日に閲覧したと記録されている場合もあります。このように、気軽に使えるインターネットでは、ウィルスやパスワードの漏洩だけではない広い意味でのセキュリティに重大な問題を引き起こす危険性があるのです。このような危険を回避するには、掲示板をはじめインターネットの基礎的な知識を学ぶこと。つまり、情報リテラシーが必要です。

複雑に絡み合う情報モラルの森

以上に挙げた、ネチケットやマナー、情報リテラシー、プライバシーや肖像権、セキュリティ、著作権の5つのカテゴリーをそれぞれ1本の生い茂った木に例え、ACCSでは、5本の木を「情報モラルの森」として説明しています。それは、5本の木はそれぞれ独立しているように見えますが、実は根っこでは複雑に繋がり絡み合っているからです。

たとえば、冒頭のBの例で、撮影したのが生徒だったらどうでしょう。b先生が無断でホームページに掲載すれば、肖像権だけでなく著作権の問題が発生します。また、ネチケットに欠ける掲示板では、海賊版ソフトやわいせつ画像の交換が行われ、モラルの欠如と違法行為は表裏一体となっている例も多々あります。

つまり、情報モラルを考えるとき、1本の木を見ても本質は理解できません。「○○してはいけない」「〜のときは○○する」といった個別のハウツーではなく、その根っこにある「情報モラル」の視点を常に意識しておくべきなのです。
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