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キーワードで読む情報教育 11
校内LAN
〜あらためて教師の役割を問う〜
中川一史のキーワードへの道案内
市町村の教育委員会も「2005年までに、すべての学校のすべての教室に高速インターネットにアクセスできるコンピュータを2台ずつ」という目標に向かって動き出した。
そこでの劇的な変化の1つが校内LAN環境の充実だろう。
そして、それにつけて情報教育担当の教師は2つの側面の役割をこなさなくてはならなくなる。

ディレクターとしての教師
コンピュータやネットワークが学校に導入されると、「どの教科でどのように利用できるか?」が話題となる。そこでは、理路整然と子どもたち(や教師)があたかも鉛筆のかわりに表現の道具として「サラサラと」コンピュータを利用したり、資料収集の方法の1つとしてネットワークを利用したりすることを前提としている。このような教科や総合での活用について追究していくことも重要だ。
一方で、子どもたちはコンピュータやネットワークと関わるときに、子どもたち1人ひとりの対応や受け取り方が違う。コンピュータそのものについての使い方の壁にぶちあたったり、ネットワークでのメールについてトラブルがあったりと、そこにはさまざまな「関わり」のドラマが存在する。そのような「関わり」を見落としたり、目を向けずにいると教師には、日ごろの「人・もの・こと」と子どもたちとの関わりから学びにむすびつける機会をたくさん逸していることになるだろう。公開授業に間に合わせるために、子どもたちに対してパソコンの操作技術を「訓練」するような本末転倒の話になってしまうのが関の山だ。

このような子どもたちとコンピュータ(ネットワーク)との生き生きとした関係を見逃さずに、時間や場を保証し、さらに「コンピュータやネットワークの活用」を教科や活動の中に位置づけていくことは「ディレクターとしての教師」の役目になるだろう。

プロデューサーとしての教師
実は、ネットワークを実践の場で活用していく上で、ディレクターとしての教師、つまり、ネットワークをいかに子どもたちの実践にからめていくか、という視点でものごとを考えるより、もう少しひいた役目の立場の人間が必要になってくる。つまり、環境を整える役目の教師、ボランティアを含めた集団、あるいは校内組織が必要になってくるのだ。このような推進役の教師を「プロデューサーとしての教師」と呼ぶことにしよう。これは多くの場合、研究主任だったり情報主任だったりする。

コンピュータやネットワークがからむ実践は、残念ながら機材や設備がなくてはできない。自分の学校でネットワークの実践を行うために、どんな機材・設備が必要なのか?何がたりないのか?たりないものをそろえるためにどうすれば良いのか?を誰かが考えていかなければならないのだ。もっとも多くの学校では、たとえばインターネットに接続される端末のパソコンは地域の教育委員会で決められていて自由に増やせなかったり、そういう規制がなくても、予算的にできないというのが現状だろう。機材1つをそろえたり増やしたりするにしても、学校はネットワーク関係だけで予算が使えるわけではなく、全体の予算枠から担当者が校内の先生たちを説得して予算を「とって」こなければならないのだ。

さて、予算がなかったら、使えるものは知恵とパワーということになる。どこかで廃棄予定のパソコンを提供してくれる親や地元の企業はないだろうか?いっしょに共同研究してくれる大学や研究所はないだろうか?必要ならばそういうところにアクションを起こすのも、プロデューサーとしての教師の役目の1つであろう。
しかしながら、ネットワークを活用した実践は、システムとしてのネットワークがそろえば、すぐにできる、というものではない。それこそいろいろな立場の人とのネットワークを確立していかなければうまくいかない。このへんは総合的な学習での外部人材確保の問題と似ている。

また、学校の中では当然のことながら、理解者であり、一緒に取り組んでくれる仲間が必要だ。どんな備品を購入するにしてもお金がかかる。学校内でのコンセンサスを得られることは必要最低条件だ。何事でもそうだが、仲間作りも大事な要素の1つなのだ。ともすると、パソコンのことを知らない先生方からは、けむたがられてしまう。そのためにも、授業で活用!と力を入れる前に、趣味のレベルでも一緒に話せる仲間(味方あるいは理解者といってもよい)を積極的に学校内に作るべきであろう。

学校で自分や子どもたちがインターネットを使っているところを見て興味をもって授業でさわらせようとしている先生がいたら、すかさず、「はじめの一歩」のサポートに出向きたい。校内研修を職員会議や研究会の合間の時間をやりくりして開き、楽しそうなところを体験してもらい、のせていってしまおう。もちろん、自分が率先してコンピュータがらみの授業を見せて、子どもたちの生き生きとした姿などを目の当たりにしてもらうことも必要かもしれない。

近ごろ、緊急雇用対策などのからみで、地域内の各校にコンピュータ活用アシスタントを1人ずつ(あるいは数校に1人)配置するところも出てきた。しかし、まだまだ多くの地域ではこのような恩恵を受けてはいない。

いずれにしても、一番重要なことは、それが学習時間であれ、休み時間であれ、使いたい子が使いたいときに使いたいように使える環境を提供できるか、その共通理解がはかられるか、さらに、それらの環境の充実をどのように学校レベルではかれるか、ということだ。
中川一史(なかがわひとし)金沢大学教育学部教育実践総合センター助教授
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 江守恒明(富山県 富山県立大門高等学校)
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