デジタル表現研究会
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先生の道具箱 著作権ワンポイントアドバイス
第1回 著作権とACCSの役割  1 2
著作権思想の普及は民主主義教育
以上2つの活動からは、読者の中にはACCSを権利保護を声高に叫ぶ圧力団体と受け取る方がいるかも知れません。しかし、ACCSが最も重視し力を入れているのが3つ目の柱である著作権思想を含む情報モラルの普及・啓発活動です。

絵を真似されたり書き換えられたときの子供たちの気持ちが著作権思想の原点であると冒頭で触れましたが、他者に対し敬意を払い正当に認めようという考え方は、それこそが民主主義教育の格好の材料であるとACCSでは考えています。子供たちが自分の表現を大事にしたいと考えるなら、その気持ちを外に広げ、自分の表現と同じように友達の表現も大事にしたいと思って欲しい。その視点を社会に広げれば、誰かの表現を真似すること、勝手にコピーしたり手を加えることはいけないことだと理解できるでしょう。子供たちが自分の教室で話し合ってルールを作ってもいいと思います。自分が嫌だと思うことは他の人にはしない。そのルールを社会に当てはめれば、それが法律であるということが理解できると思います。自分の表現を大事にしたいと思い、クリエイター指向を持つ子供たちだからこそ、表現の尊重すなわち著作権を題材にすることで、ルール(法律)の概念ひいては民主主義について理解されるのではないかと思います。

ACCSが、ルール(法律)違反に対しては断固とした対応をとる一方、特に学校現場における著作権思想の普及に力を入れるのは、それがルール(法律)を守るという民主主義の基本教育につながるからに他なりません。結果として著作権違反事件が減り、誰もが他者の表現の結果たる著作物に敬意を払う社会を作ることが、ACCSの活動の基本なのです。そして、クリエイター指向の子供たちに、ルールを守るという民主主義教育まで視野に入れた著作権教育を行えば、子供たちは素直にその思想を吸収してくれるものと筆者は期待しています。
著作権思想を核に情報モラル教育を
先に挙げた高校生によるネットワーク上の事件は、ネットワーク上だから起こった固有の問題だとは言えません。個人の特定が難しい匿名のネットワークという特性はあったとしても、現実社会での遵法意識などの反映に過ぎないのです。もし、彼らが、小学校の時に持っていたであろう他人にコピーされたら嫌だという素直な気持ちや、クリエイターの仕事への憧れを、他者に対して想像する力を持っていたなら、このような事件は起こらなかったかも知れません。そして、子供たちを犯罪者にしないためにも、コンピュータやインターネットが生活の一部になりつつある今こそ、著作権保護だけにとどまらない情報モラル教育が必要になっています。情報モラルとは、著作権思想の他、ネットワーク上でのマナーやルールなどいわゆるネチケット、情報の取捨選択に関わる情報リテラシー、ウィルス対策やハッカー攻撃に備えるコンピュータセキュリティ、個人情報などプライバシーの取り扱いを含みます。いずれも、表向きは個々の問題と捉えられがちですが、実は根ではつながっています。
情報モラルを考えるASK ACCS
s次回からは、民主主義教育を根幹とする、著作権問題を中心とした情報モラルについて、より具体的な事例とともにこの問題を掘り下げます。なお、ACCSでは、この問題について情報モラル委員会を設置し、ACCSに寄せられた質問をもとにしたQ&Aをまとめています。「デジタル時代の情報モラルを考える著作権・プライバシー相談室『ASK ACCS』」を、この連載と合わせてご活用ください。また、ASK ACCSのコンテンツが本になって岩波書店から販売されています。久保田裕・佐藤英雄「知っておきたい情報モラルQ&A」岩波アクティブ新書。詳しくは、岩波アクティブ新書の既刊一覧をご覧ください。
久保田裕  社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会 専務理事・事務局長
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