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Vol.2 アートディレクターから見た日本の情報教育  1 2 3
 
そういった商品への愛情、情熱があるせいなのかもしれませんが、佐藤さんが手掛けた作品は極めて記号性が高いというか、明確な記号として生活者に強く届いてきますよね。
 
佐藤:僕は広告の仕事をはじめたときにコンピュータも一緒にはじめて、いまでも良く覚えてるんですけど、MACを立ち上げるとアイコンがパーッと並ぶじゃないですか。あれを見てて、広告ってこういうことなんだと思ったんですよ。

たとえばアドビのIllustratorなどの起動画面が立ち上がる際に、こんなに小っちゃいのにかなり複雑な絵柄がアイコンになってますよね。しかもそういったアイコンが他にもたくさんある。

つまりアイコンは普通のロゴマークとは違って、もっと情報が入っているものだと感じた。広告はまさにこれだなって。最近だとインターネット・エクスプローラのアイコンなどは動いていますよね。とするとこれは、CMにあたるなとか。

そういったコンピュータの世界や、コンピュータ画面を構成している要素。そこに並んだアイコンの存在のように広告を作ることができるし、これからはそういったものが世の中で認められるんじゃないのかな、と。そういったことを、仕事をしながら感じていました。
 
ピュアな意識に立ち返って、原点を見つめ直すということは意識してやっていますね
 
同時に佐藤さんの場合、作品自体がエモーショナルというか、作品表現を通じて、ある種の感情がこちらに伝わってくるといった特徴があります。その辺は制作される時点で、思い入れのようなものを努めて付加するように心がけているのですか?
 
佐藤:それは、デザインとして広告を作っていないからです。つまり絵柄として作っているわけじゃない。見たときにどういう印象を受けるか、ということをデザインしているわけであって、それを作るのが広告なんだと思っています。

たとえば過去の作品ですが、ホンダのステップワゴンの広告の場合、あれを見たら温かい気持ちになって、可愛くて、ステップワゴンを見たら「嫌い」という人がいない広告を作ろうと思ってやりました。

またTBCの場合は、若い奴にはわかる、というようにしたほうが良いと思ってやった。だからオジサンが見たら、なんで女性エステの広告にキムタクが出てるんだと思うかもしれないし、そういった意味でも異物としてテレビに映るだろうと。加えて言えば、スーパーアイドルのキムタクを、ビルボード壁画などのように描くことで、アンディ・ウォーホールがマリリン・モンローを描いたように、究極のアイコンにしようとも思った。

だからエモーショナルという言葉を使えば、それこそがコンセプトだし、僕の場合は、コンセプトをデザインするということになります。
 
話題は変わりますが、子どものときはどんなお子さんでしたか?
 
佐藤:超やんちゃ坊主! でも父親が芸大出の建築家で、家にはいっぱい画集があり、美大関係の情報もたくさんあるといった環境だったので、僕はずーっと絵ばっかり描いてるような子でしたね。

幼稚園くらいのときには、もうじぶんは凄く絵が上手いって確信していました(笑)。描いてることがすごく楽しかったし、誉められるとどんどん上手くなるし、色に対する感覚も敏感でした。で、高2のときに、それを職業にしようと思って、美大への進学を決めたのです。
 
そういった絵を描くことへの衝動みたいなものは、いまでも子ども時代と変わりませんか?
 
佐藤:ピュアな部分というのは、大きくなるにしたがって忘れていきますよね。それに広告をやると、いろいろと余計な情報が付着してくることも多い。

だからもっとピュアな意識に立ち返って、原点を見つめ直すということは意識してやっていますね。たとえばどうしたら人はカッコいいと思うんだろうとか、オモシロイと思うんだろうとか、キレイだって感じるんだろうとか。
 
仕事場 本棚
白い机に置かれた佐藤氏愛用のCinema display。ここから数々のヒット広告が生まれた
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