デジタル表現研究会
D-projectとは? D-allメーリングリスト サイト検索 ホーム
D-project
D-projectのあゆみ
メディア創造力を育成する実践事例
ワークショップ
ユネスコプロジェクト
教材作成
調査研究
カリキュラム検討
ネットdeカルタ
卒業アルバム作成
先生の道具箱
全国に広がるD-project
D-project アーカイブス 総合的な学習Q&A
第2回  1 2 3
 
現場の疑問に現場の声で答える 総合的な学習Q&A 提供:学研「NEW教育とコンピュータ」編集部
Q2 総合的な学習で、本当に子どもの将来のための力がつくのか不安です。
A1. 山田真代子 教諭「どんな力をつけたいかを常に意識しよう」
A2. 豊田充崇 教諭「前段階として、スキルアップをめざす活動を」
A3. 村井万寿夫 指導主事「知の総合化を図る学習展開を」
中川先生のここがポイント!「同じ力でも学年が違えば質、量ともに変わる」
どんな力をつけたいかを常に意識しよう
山田真代子
教諭
 子ども一人ひとりが自ら課題を見いだし、これまでの生活経験や各教科等で培った資質や能力を総合的に発揮して課題追求をしていく中で、周囲の人やものとかかわり自分自身のよさを見つめ直すという力は、「生きる力」そのものだと感じます。本校では、総合的な学習で育てたい力を「問題を解決する力」「学び方やものの考え方」「態度」「生き方」の4点として捉え、各学年の発達段階に応じてねらいを設定し活動を進めています。
 5年生「めざせ!エコ博士」の活動では、次のような力が育ってきました。
 三ヶ日町自然探検を通して自分の課題をもち(課題発見力)、自分で活動計画を立て(構想力)自分なりの方法で調査・体験していく(情報活用能力・行動力)中で、地域の方々や専門家とのふれあいを図り(コミュニケーション力)調査結果や自分の考えを相手を意識してまとめ(表現力)発信していきました。特に、中学生との交流や町内の小学校とのメール交換では「どんな方法で伝えるとわかりやすいか」を考え表現を工夫することができました。一連の活動を通して、「自分にできることから三ヶ日町の環境保護に取り組もう」という意識が高まってきました。
 総合的な学習で、子どもに多くの力がつきます。しかし、ただ子どもにまかせっぱなしにしないよう、教師側が「この活動でどんな力を育てたいか」を常に意識し、生活科から総合的な学習へと系統的に力を積み上げていくことが大切だと思います。
トップに戻る
A2 前段階として、スキルアップをめざす活動を
豊田充崇
教諭
 中学校での総合的な学習は、他の教科の授業に比べると、どうしても「切迫感の無い授業」となります。そのような生徒の意識の下で、単に「体験的な活動」や「地域の調べ学習」をおこなうだけでは、開放感に駆られた生徒に四苦八苦することになります。多くの準備作業や時間を費やしたにもかかわらず、残ったのは指導者の疲労感だけという状況では、やはり上記のような疑問も生じてくることでしょう。
 そこで、本校では「育成する能力を限定した授業」をまず最初におこなっています。自ら学ぶ総合的な学習に取り組む前段階として、特定のスキルアップをめざすために、1講座8時間程度で「情報機器活用講座I・II」「コミュニケーション講座I・II」「プレゼンテーション講座I・II」という約50時間の授業をおこないます。
 それぞれの講座では、画像や図形・グラフ等を利用しレイアウトした文書の作成技能の向上、ディスカッションやディベート力の向上、発表方法の能力向上をねらっています。
 このように、なかなか教科内では育成できない能力を、少人数体制で期間を決めて取り組み、必ず「振り返る」・「評価を受けて改善する」という活動を取り入れ、向上した能力をきっちりと把握することにしています。
 これらの講座を通じて、情報活用能力・プレゼンテーション能力・コミュニケーション能力などの向上をめざしているわけですが、どれも将来に重要な役割を果たす力であり、今の日本人に特に欠けている力であるとも言われています。
 よって、特に教科学習で重視する基礎知識の習得と、特に総合的な学習で重視して育成しているこれらの能力の両方を「子どもの学び」と捉えることが重要であると思います。
 そして、両者は異質の学びではなく、教科で学んだしっかりした基礎知識があるからこそ総合的な学習が成功し、総合的な学習で養われる上記のような能力があることによって、知識習得の学習に対しても受身ではなく主体的に取り組むようにもなると言えます。この両方の学びのバランスや相互作用の効果にも目を向けていく必要があると言えるでしょう。
トップに戻る
A3 知の総合化を図る学習展開を
村井万寿夫
指導主事
 今、求められているのは、主体的に考え行動できる子どもの育成です。いわゆる、子どもに生きる力をはぐくむことが求められています。そこで、教科の学習によって身についた資質や能力が総合的な学習の時間で生かされるようにすることで、求める子ども像に迫ることができます。このことを意識して総合的な学習を組み立て、展開することによって、自己の生き方やあり方を考えることができるようになり、生きる力(将来のための力)をはぐくむことになります。
 たとえば、社会科で加賀友禅の歴史や工程を調べ、図画工作科の時間で自らの作品作りに挑戦する中で、社会で学んだことを生かすことができます。また、理科で物の溶け方について学習したあとに彩色のための染料づくりを実際に行うことで、理科で学んだことを生かすことができます。
 このように知の総合化を図る学習を展開することによって、子どもたちに総合的な力をはくぐむことができるのです。
トップに戻る
中川先生のここがポイント! 同じ力でも学年が違えば
質、量ともに変わる


つける力のつながり、高まりを意識しよう

 いくらつけたい力が具体的になったからと言って、それがその学年単体で進められては、総合的な学習における学校全体での子どもの育ちが共通理解できません。ある学校では、「人にわかりやすく伝える」力を3〜6年のさまざまな活動で、つけたい力として登場させています。しかし、3年生でつけたい「人にわかりやすく伝える」力と6年生でつけたい「人にわかりやすく伝える」力は質的にも量的にも同じではありません。6年生になるまでに、さまざまな場面を経験し、伝える対象が広がり、伝え方のバリエーションも豊富になってきているのです。それをふまえた上で、つけたい力を具体的な活動にうめこんでいくべきです。
 この「つける力のつながり、高まり」を明確に意識し、校内で共通理解がとれていれば、各学年で活動内容のジャンルが異なっていようとも、総合的な学習で子どもたちは何を学んでいくのかということを、例えば保護者にきちんと説明できるわけです。

月刊「NEW教育とコンピュータ」5月号より転載

back バックナンバーへ 第3回へ
D-project アーカイブス 総合的な学習Q&A