デジタル表現研究会
D-projectとは? D-allメーリングリスト サイト検索 ホーム
D-project
D-projectのあゆみ
メディア創造力を育成する実践事例
ワークショップ
ユネスコプロジェクト
教材作成
調査研究
カリキュラム検討
ネットdeカルタ
卒業アルバム作成
先生の道具箱
全国に広がるD-project
D-project アーカイブス Dの現場から
1 2 3
 
Dの現場から
メディア・アーティスト安斎利洋氏/メディア・アーティスト中村理恵子氏
連画と呼ばれる、ネットワークを使ったユニークなスタイルのグラフィック・コミュニケーションがある。安斎利洋氏と中村理恵子氏によって始められ、日本のアートシーンのみならず、世界の第一線でも高い評価を得ているこのアートが、日本の教育界で熱い注目を集めている。ひと言でいえば、連画とは和歌の“連歌”とも共鳴しあう、人との繋がりの上に成り立ったコミュニケーションアート。総合的な学習、情報教育と、これまでにない領域での学習方法や教育環境の模索が始まっている現在、創造力を連鎖していくこのコミュニケーション手法には、これからの教育空間を形作っていくために必要なヒントや哲学がたくさん詰まっている。Dの現場から〜第1回目は、そんなアートという創作行為を通じて、斬新な価値観を提供してくれるお二人のアーティストにお話をうかがった。
 
お二人の出会いは、いわゆるデジタル草創期のことと聞いています。
 
中村理恵子(以下、中村):私は美大を卒業してから、油絵と彫刻を専門にしていました。で、7年くらい在野の美術研究所に行った後、いまで言うネットワークプロバイダーのような会社に就職して、BBSの番組企画の仕事を始めたんです。その頃ですね、安斎さんに出会ったのは。彼は当時DOS上のフルカラーペイントシステムのスタンダードだった『スーパー・タブロー』を開発した張本人で、あるCGフォーラムのシスオペをしていました。だから二人の活動の始まりは、ネットワーク上の番組企画者とタレントみたいな関係。

安斎利洋(以下、安斎):その会社のPR誌の表紙がとても不思議な絵だった。ほお、こういう絵を描く人がいるのかと。で、パソコン通信の仕事を一緒にしながら彼女と話をしているうちに、実はそれが中村さんが描いた絵だということがわかった。あ、ほんとは絵描きなんだと(笑)。

中村:(笑)。
 
ところで『連画』の始まりは、安斎さんから中村さんに宛てた、一通の電子メールがきっかけとか。
 
安斎:ある時、スーパー・タブローを使ったセミナーをやったんですね。そこで自分の描く絵を持っていって、スーパー・タブローを使って描くその過程をみんなに見せようとしたんです。ところがどこでどう間違えたのか、僕の絵の前に中村さんの絵が入っていた。で、僕はその絵を勝手にいじり始めちゃったんです。というのも、それはデジタルのデータなので、元に戻すことができる。
 それでも他人のキャンバスに手を入れてる感じがして、妙にドキドキしながら(笑)、非常に新鮮な感覚を味わった。そのとき初めて、デジタルで絵を描くことのヒント。つまりコミュニケーションの中から絵が生まれるといったことを考えはじめて、そういったことを書いて中村さんにメールしたんです。

中村:ヒドイよね。しかも会社に送ってくるんですよ(笑)。でもまあ、そうして連画が始まった。私が描いたファーストセッションの一番最初の絵は、単なるドローイングだったよね。
 
First Session 『気楽な日曜日』より抜粋
Second Session 『春の巻』より抜粋
(上)1992年4月、突如として始まった連画セッション。中村氏のシンプルな墨絵からスタートした作品に、安斎氏は背景の色付けと単純な加筆で返答
(下)同年12月から1994年の1月まで続けられた、第2セッション開始時の作品。安斎氏が画像処理した自身の「足」を、中村氏は“天界から落ちそうになった天使の足”とイメージして返した
 
まるで音楽の世界にある、ジャムセッションのようなスタイルですね。
 
安斎:音楽は基本的にハーモニーがありますよね。でもこれまでの絵の世界は、空間的に地面と同じでテリトリーになる。たとえばみんなで絵を描こうと提案しても、じゃあ僕はここまで描くから君はそこまでとか、混ざるとかえって不愉快になったりとか。絵の世界はデジタルが入ってくるまで、侵してはいけない強固な地面と同じだった。

中村:ところがデジタルが入ってきてから、何の抵抗もなく手を入れることができるようになって、はじめて絵の世界に音楽と同じようなハーモニーや、コラボレーションといった、今まで有り得なかった可能性が開けてきた。

安斎:僕はもともと俳諧というか、連歌の世界に興味があったんです。特に一番興味深いことは、中心がないこと。連歌は何かテーマを決めてやるんじゃないんですね。AからBへそしてCへ、どんどん車窓の景色みたいに、ルーツやルートを忘れていかなければいけない。
 つまり局所的な、ローカルのメッセージとメッセージが出会うということが連歌なんですね。この構造自体、これからの時代にとって極めて重要なことだと僕は思うんです。何故ならこれこそ、Peer to Peerそのものなんですよ。連歌というのはその原型で、連画もPeer to Peerに意味がある。
  バックナンバーへ next
D-project アーカイブス Dの現場から