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Dの現場から Vol.3 プロダクトデザイナーから見た日本の情報教育「モノへの眼差し、表現の育てかた
 
岩崎一郎氏
次々に新たなスタイルを打ち出す情報端末、空前のインテリアブーム、セレクトショップ人気など、日本には今いくつもの、ホットなカルチャーシーンがある。そして、そこで見られる共通のキーワードが、優れたプロダクトデザイン。岩崎一郎氏は、そんな活況を呈する現在のプロダクトデザイン界において、最も注目される若手デザイナーの一人だ。韓国家電メーカーとのコラボレーションによる「MUTECH」(ミューテック)ブランドは、日本でも発売され、オーディオや電話機など売り切れ続出が相次ぐほど、極めて高い人気を誇っている。世界中にクライアントを持ち、モノを通じたデザイン表現で、日本に新たな風を送りつづける岩崎氏。日本の子どもたちの「表現」教育についても、大きな関心を示している。
 
現在の活動状況からお聞きしたいと思います。
 
岩崎一郎(以下、岩崎):私はプロダクトデザインという分野で仕事をしているわけですが、デザインしている物は、テーブルウェアやカトラリーなどの生活雑貨、情報端末、電機製品、レジャー用品など、幅広く手掛けています。
 
  PONDER
  PONDER(1998年)
IWASAKI DESIGN STUDIO
EL テーブルランプ
(プロトタイプ)
   
そもそもプロダクトデザインの世界に入ったのは、どういった理由からなのでしょう。

岩崎:それはですね…、物を作る仕事がしたかったから。小学生くらいのときから何故かその目標がはっきりしていて、とにかくそういったことがしたくて迷いがなかった。といってもその頃はまだ子どもですし、デザインや物を作るといっても、具体的なことまでは分からなかったのですが。

小学生の頃から!

岩崎:興味の対象がたとえば昆虫であれば、虫を見たり、捕まえたり、育てたり、観察して今度はそれを描いてみたりという風に、物を見たり、触ったり、作ったりするのが大好きでした。

ですから試験勉強のときなども、息抜きしようと思って絵を描きだすでしょ。そうすると、いつのまにかそっちがメインになっちゃって、その絵を描き上げてから勉強の続きをやろうなんて思っていると、気がつくと朝方。学校に行く2時間前くらいになっていた(笑)。

子ども時代の集中力というのは、とにかく疲れを知らない。ご飯に呼ばれても、今は食べたくないというような…。その頃というのは、徹底的に集中できるし、楽しいし、それだけで良いという感じでしたね。
 
今でもその集中力が持続しているわけですね(笑)。
 
岩崎:あの頃ほどは(笑)…。ただ子ども時代を振り返ってみて思うのは、集中力というのは、好きなものに偏ってしまうということですね。そしてサッカーでも何でも良いと思いますが、その偏りも含め、好きなものに対する集中力がとても大事なんだということです。

だから、こんなこともあんなこともあるよと、子どもの好きなものを見つけ、探してあげて、導いてあげるのが、身近にいる親や先生の役目なのだと思います。その上で、子どもがその中から選び、やってみたらすごく面白い。或いはやってはみたが、つまらなかったと。ただ…。

 
ただ?
 
岩崎:クラシック音楽などでも、無理矢理、教育だからと聴かせてみても、眠たくなりますよね。すると嫌いになる。そういう与え方じゃなく、マンガの主題歌というような、子どもの好きな世界から入っていくべきだと思います。すると段階を経て、次の欲求が芽生えてくる。いきなり「クラシック!」という間違ったやりかたをするとちょっと…。

私も子どもの頃にピアノを習わされていましたが、先生が鍵盤を指して「この音は何? この音は?」と聞いてくるんですよ。もう苦痛でしかなかった。遊びながら入っていけば、今でもやっていたかもしれない。ところがそうじゃなかった。毎回テストというか、勉強なんですね。

遊びながら、気がついたら弾けるようになっていたとか、そういった入り方や教え方が最初のうちは必要なんじゃないのかな。成長は遅いかもしれないけれど、そういった遊びながらの部分をゆっくり大切に行っていかないと、本人自身が続けていくのは難しくなるんじゃないかと思います。
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