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Vol.3 プロダクトデザイナーから見た日本の情報教育  1 2 3
 
小学校には図工や美術の時間がありますが、そういった時間はどう過ごしていましたか?
 
  岩崎一郎氏
岩崎一郎氏
岩崎:絵を描くことが好きだったので、なかにはテーマとしては退屈な時間もありましたが、粘土をこねるとか、鉛筆で何かを描くとか、その行為自体は面白いし、低学年のときは、別段、不満を持っていたということはありません。

でもひとつだけ、今でも忘れられない強烈な想い出があります。小学校4年生くらいのことですが、写生の時間に外の景色を描いていたんですね。太陽をしっかりと、こう、子どもが描くように線やフォルムなども色を使って。

そうしたらそれを見た先生に呼ばれて、怒られましてね。「そろそろこういう太陽は描かないほうがいい」と。で、ああ、こういう描き方は良くないんだと感じまして。言われたそのこと自体、本当はよく理解できないんだけれども、先生に言われたから。かなりショックだった。

ですが後になって、それは大きな間違いであることが分かった。つまり絵は上手い下手じゃない、何を感じるかというところなわけです。子どもは感じたまま見えたままを描くし、だからこそ、そこからいろんな物の見方や表現の仕方が育っていく。とすると、まずは子どもたちに自由に描かせるのが一番の教育。パースの取り方であるとかデッサン力であるとか、そういったことは専門教育の段階でやればいい。

というのも、あるとき横浜のアメリカンスクールで小学校の低学年の子どもたちの絵を見る機会があったんです。学校の廊下にパーッと貼ってあったんですが、それを見たときには本当に驚かされた。
 
どういった部分に?
 
岩崎:全部が違う。絵のテーマも、色も、何もかもが全部違う。

ポジティブな視点であったりネガティブな視点であったり、寄った視点であったり離れた視点であったり、間接的な言い方であったり直接的なメッセージであったり、もうそれぞれが違う。だから絵としても、まったく違う。

そうするとそれを見たこちらも、上手い下手なんてことは思わないんですね。それよりもまず、メッセージが強烈に伝わってきますから。どうしてこんなにメッセージを伝えるのが上手なのか不思議なくらい、内容がはっきりしている。何を見て、何を伝えたいのか、そこでしっかり表現できている。そこらへんのアートディレクターより、よほど優秀ですね。
 
いっぽう日本の場合は。
 
岩崎:日本の子どもたちの絵を見ていると、とんでもなく個性がない。ナントカ省の判子でも押したように、みんな同じなんですよ。先日も美大に話をしに行ったんですが、そこの学生たちの絵を見せられた。すると、もう一緒なんですね。全部、同じ絵。もちろん一つ一つ色やデザイン、コラージュの手法など、テクニックは違いますよ。でもある距離を持って見た場合、すべて一つの括りの中でしか捉えていないし、表現していない。そもそも考えていない。非常に残念でしたね。だって、その道のプロを目指している美大生なんですよ。
 
岩崎さんは独立される以前、ソニーのデザインセンターにお勤めになり、それからイタリアに渡られた。ソニー時代に学んだことというのは?
 
  telephone 610
telephone 610(2000年)
MUTECH 留守番電話器
ドイツ「2002 iFデザインアワード」受賞
「2001-2002 Gマーク デザインマネージメント賞」受賞
岩崎:物のクオリティ、デザインのクオリティということを知りましたね。それと、ソニーにおけるプロダクトデザインのひとつのパターンや、開発プロセス上のスキルを見ることができました。

プロダクトデザインというのは、ある種、物事の解決方法なのですが、物事にはいろんな解決の仕方がありますよね。「ソニー」というのもその一つの解決方法で、しかもデザイン的な完成度も含めて、もの凄くクオリティの高い答えなわけです。

ただ世界は大きい。確かにソニーファンというのは世界中にいて、ソニーの物作りはクオリティが高いかもしれないけれど、世界の中で見ればそれは一部でしかないわけです。しかもそれは電機製品に限られたことです。

世界は広いし、一つの答えの中だけで自分を固めてしまうのは怖い。だから、若いうちはもっと世界を見たい、触れたいと思って独立しました。同時にもっともっと失敗をして、経験していくためには、リセットボタンを押してゼロに戻るということが、自分にとっていちばんの目的だった。

イタリアを選んだ理由は、そんな日本と対局にある国という気がして、日本にない魅力を感じたからです。実際渡欧して、そこで経験した物作りのプロセスや、物作りへのこだわりは全然違ったものでした。それに向こうで語学を学ぼうとしたときにも、言葉の覚え方やそこでの教育のされ方が、日本のそれとはかなり違っていましたね。

audio405 audio405(2000年)
MUTECH ミニコンポーネントシステム/リモートコントローラー
ドイツ「2002 iFデザインアワード」受賞
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